うらそえ日記

奇談小説家・早見慎司(早見裕司)の公式ブログです。
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TV「吸血姫美夕大昔語り」・7

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    TOMCAT』また手前勝手なところへ話が行きますが、『ATHENA』のあの話(石橋けい主演の深夜ドラマ。超能力ものの大傑作)ですね、超能力表現という奴ですが、あれはだから、どうせ心理描写なんだから、一切、モノが壊れたとか、モノが曲がったってのは、体育館でバーンってだけでしょう。
    あれをドン引きの絵で合成でなんかでモノがパリパリパリとか壊れるとかやったって、実はそんなに面白くないんであって、どうせやってるコトはなんだか判らないサイキックウェーヴがビョーンと出てきて受けの芝居だったら、あの二人の対決してたトコならそういうの描けないでしょう、野っ原だし。だからアレはああいうので正解だと思ったんですよ。どうせ力を介して対話してるだけなんだからと。
    『早見』僕はとってもフィジカルに考えてるんで、まあ、そこで衝撃波、あるだろうな、とか、『フューリー』(ブライアン・デ・パルマ監督のサイキック・ホラー映画)で遊園地歩いてると、その辺がボンボンボンボン爆発しちゃいますけども、そういうふうに考えているんですわね、パワーと謂うモノを。
    なので、『ATHENA』の場合は、実際にナニが起こってるのか、ちょっとよくわかんなかった。さっきあの、どうせその話になるだろうと思って見返してみたんですが、アテナが撥ね返してるかどうかわかんない、それはネット上でいわれたような、合成の絵でやってくれと謂うコトじゃなくて、たとえば終わった後アテナの息が切れてないかとか、或いはあの、円形のプールで、周りに影響はなかったのか、と。そういう、リアリティなのかアクチュアリティなのかよくわかんないんですけど、そういうコト考えてたんですね。昨日一晩考えてたんですけど、一晩も考えてたんでスッカリ忘れちゃいました(笑)。
    『TOMCAT』スッカリ片附きましたか、自分の中で?(笑)
    『早見』まあまあ結構、時系列的になにが起きているのかが判ったんですね。
    『TOMCAT』それは全部台詞で説明してますけどね。だけど、たとえば「う〜〜〜」とやって受けの芝居があると、これは台詞で説明してんのと、ホントは変わんねーだろうと、なんか合成があるにせよね、と謂う風に考えたんですよ、私は。だから「や〜〜〜」とやって「う〜〜〜」と謂うリアクションが、っていうぐらいだったら……。
    (テープ、いったん切れる)
    『TOMCAT』じゃあ、監視者についてお伺いしましょうか。ちょっと父親が監視者になった経緯ってのを……何時の間に父母が逆転したのか?
    『早見』……なぜだろう?(笑)最初の設定では、母がバンパイアの一族だってコトになってました、けれども、父親が監視者だと言い出したのは監督です。理由は僕は聞いてないですけど、こういう言い方をすると語弊があるかも知れないですが、要するに『田園に死す』だから『記憶を亡くしたお母さん』がさまよってなきゃいけないんですよ。そうすると、お母さん監視者にできませんわな、そうすると、不在の父の方を監視者に、ってコトだと思うんですね。
    監督に聞くと、ちゃんとした答は必ず出して下さいますけどね、だから、白塗りの青年が、アレ、わかんないでしょう。あれね、私も意味は知らないんです。(脚本を書く上で)困らなかったから。……『田園に死す』の高野浩幸さんです、ティガにも出ましたが。
    『TOMCAT』とりあえず、この、学生さんはとにかく出したいと?
    『早見』はい、「舞台で美夕が踊ってて、白塗りの学生がそれを見てるんだ」。で、「ああそうですか」って言っちゃう私も私なんですが、ただそれは、どう謂う風に意味を持たせるかは、脚本家の仕事なんで、わかんないのは脚本家が悪いんですよね。
    ただ、あれで最後、「オレの血を吸えよ」と、アレは監督がやりました。僕はお母さんの血を吸うコトにしといたんですけど、それが出来ないと言われたんです。(何故?)コンテでモノを考えているので監督は、それは僕には判らないコトです。
    『TOMCAT』狂ったお母さんの血ぃ吸うってオチにはしたくなかったワケですね?
    『早見』そうです。
    『TOMCAT』で、とりあえずなんだかわかんねー学生さんがウロウロいて、で、一番最後に生き残って、で、結局彼って、ナニもしなかったワケですよね、で、フラフラしてて、行こうとする美夕に「オレの血を吸えよ」と。で、何故か下駄があってですね……
    『早見』下駄があって、は、それは私が書きました。その後美夕ずっと裸足なんで。
    『TOMCAT』でも、その前から美夕、裸足ですよ?
    『早見』そういやぁそうですね……(笑)
    『TOMCAT』凄いことが判ってしまった(笑)
    『早見』オレ、なんか考えてんのかなぁ?(笑)
    『TOMCAT』下駄は履いてなかったよね、学生さんが下駄だから学生さんの下駄かと……
    『早見』まずいなぁ(笑)。
    『TOMCAT』とりあえず、美夕が下駄脱いだコトにしましょう。
    『早見』それはたとえば、アフレコの時には脚本はもうなくて、絵コンテから起こされたアフレコ台本で見るので、それと絵で見て、こっちが書いたのと違う解釈になるコトあります。それに関して私は、その方が面白いと思ってるんです。何故なら小説ではないから。
    小説は一人で全部意味を決め込むワケですけども、違う解釈によってプラスに働くんだったらその方がいいなと思ってるんです。で、とにかくあの学生はわからない、いや、死んだと後で言ってましたね。僕は最初は、あれは生きてるモンだと思ってたんです、で、ずっと墓を守ってるとか書いてたんですけど、「いやアレは死んだんだ」と言われちゃって、でまた、「ああそうですか」と。
    『TOMCAT』でも、あの白拍子の恰好では全部裸足ですよね。
    『早見』そうなんです……そうなんですじゃねえや(笑)……ただあの、下駄脱いで、は裸足で歩いて行くんだっていうイメージなんですわな。これは、ジュヌヴィエーヴ・ビジョルド(ブライアン・デ・パルマ監督の『愛のメモリー』に主演した女優)が主演した『コーマ』(医学スリラー映画)という映画があって、ヒロインがいよいよ逆襲に転じるときに、パンストを脱ぐんですね。それが即ち、二本の足で立つ、ということだ、というのがあったんですね。
    『TOMCAT』イメージ、ってモンですか?

    吸血姫美夕 | permalink | comments(0) | -

    TV「美夕大昔語り」・6

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      (『神魔の旗』について)
      『早見』あれ、アクション編なんで、私書けないんですよ。それは最初っから監督には言っていて、アクションは書けませんから、と。ちょっとどころじゃなく苦手ですよ。
      ……脚本の時点で失敗してる回が3回あって、他は失敗してないと思ってる辺りが随分傲慢ですけど。えーと、一回は、ヒトのなんであまり言えないんですが『葦の鳴く庭』で、あれは総ての問題が噴出した回なんですけど。これはいろいろあって、最終的に、ジョン・コリアの『みどりの想い』(代表的な短編ホラー小説)にせざるを得なくなったんですが、花が猫の目になっている、っていうのが猟奇だ、と言われてしまって。島津冴子さんは、実にいいんですけどね。
      後は『美夕の亡霊』。これは、あの、作画面も大変問題があったんですけど、それ以前に脚本として失敗してたのは、自分が美夕だと思ってる神魔が出てきて、最後まで自分が美夕だと思い込んでて、じゃあ美夕は自分を美夕だと思い込んでるけど、ホントは美夕じゃないんじゃないかっていう、アイデンティティーの揺らぎをやろうと思ったら、監督が、いや、美夕はアイデンティティーは揺らがない、あと、ラヴァは見分けは絶対につくと。言われちゃって困ってね、どうしたらいいかわかんなくなっちゃったんで、これ、失敗したんです。
      後一本、『神魔の旗』が失敗したのは、こら簡単なコトで……。
      『TOMCAT』……電柱ですか?(笑)
      『早見』あの電柱はなあ。背景を海外に出したときに、資料として渡した写真集の年代が新しくて、電柱が立っているのを、直し入れないで出しちゃったんですって。
      あと、神魔の旗ってのは、守護神魔ってのは、後に旅芸人として出て来るから、そういう異人たちなのに、血筋が、って話にしちゃったじゃないですか。やけに封建社会になっちゃったんですよね、だからあれ、構造上間違ってますよね。これはもう、何も考えてなくて、とにかくもう、棺桶引き摺って来るんだとか、腕がガトリングガンになってるんだとか、アタマの中では『飛べ!必殺うらごろし』とか『荒野の素浪人』とか、そういうコトを考えてたんで……フィジカルなものがないと、書けないんですよ。僕は。
      『TOMCAT』だからあの、神魔の出鱈目さっつのもいいですよね、「あれ、神魔じゃないじゃん」とか思ったですよね、「腕、ガトリングガンって何?」とか思ったですよ。
      『早見』あれは完全に、「この世界は書き割りだ」って松風が言ってますけど、書き割り感を出したかったんです。そこだけ妙に時代劇な空間ってのをね。それが出なかったのは、オレのせいじゃないです(笑)。その、村長の家が守護神魔の末裔だっていうのにしちゃったのは、私が悪いんですけども、あそこが全然異空間に見えないのは、そら絵が悪いですよ。一番は美術の問題だったんですけどね。佐々木さん(佐々木敏子さん。作画監督。TVでは重用された)が悪いとか、そういう問題じゃなかったんですよねえ、あれ……。
      『TOMCAT』とりあえず、ちょっと力が足りなかったのかな、ってとこで納めましょう。
      『早見』はい、納めましょう。このところへ来るまで、守護神魔って話を監督はしてなかったんです。或いは監督の中で段々次第に醸成されて来たモノかも知れないんですけども。で、『神魔の旗』の時点では、まだ各話バラけた話でやる筈だったんですが、その守護神魔をここで出そうと。

      もう一つは、冷羽の父親コンプレックスですね、それも入れようと。そうすると各話の脚本の方に書けないんです。設定話になっちゃうんで、そこのところでの、ちょっと混乱はありました。あと、表現上の問題もありました。あれ、『うらごろし』だから、中村敦夫で、ジャンプして串刺しにするんだけど、絵で描けないじゃないですか。あの、ラヴァが突き刺すのもダメだっていうコトだったんで(ビデオでは直った)。あの、ボクは『うらごろし』の一話を監督に見せて、「これでどうでしょう?」っていうのでやりましたから。この守護神魔の話が出てきたのは、そのくらいまで進んでからですね。
      『TOMCAT』オレはあの雰囲気、まあ、村人たちのシークェンスってのは確かに時代劇感は出てなかったですけど、神魔の兄弟が出てきたところのザラついた感じとか、日本なのになんとなく西部っぽい雰囲気とか、あれはやっぱり白土三平的なところがあって……。
      『早見』白土三平というか、一時期日本の時代劇のTV番組が、大変マカロニウェスタンに近付いたところはありますわね。大体『ライオン丸』や、『必殺』の音楽なんかもそうですしね。『子連れ狼』でも結構そうなのかなって気がしちゃいますけど、そういう感じを出そうとして、で、そのために切り通し(短いトンネル)を通るという装置をつくったワケですわ。あれは『ツィゴイネルワイゼン』の切り通しですね。
      それで、ラストも、切り通しから出てみると、その向こうには現代の町並みがダーッと浮かび上がるって書いたら、出てないんだ、これが。あれ、別世界であるコトがわかんないと、ティピカルな時代劇の村長の家があって、ってのが、全然出ないんですよね。それは非常に残念なコトではありました。
      『TOMCAT』まあ、基本的にアクションが苦手って言われるけど、あのアクションがおかしいのはですね、真面目くさってですね、やってんだけど、「あれ、ダーティペアじゃねーか?」って話があっってですね、だってですね、冷静に考えてみればですね、美夕と冷羽が共闘してダブル必殺技〜っつったら、パカパカパカーと跳ね飛ばされて火は飛ぶは何は飛ぶはで一家村焼亡っつーのはですね、ハッキリ言ってギャグでしょう?
      『早見』それをギャグにしちゃうのは、しかたない問題だと思います。つまりですね、TVの美夕で、様々な問題があると思うんです。たとえば力の描写ですね。『海の光』の時に、美夕と冷羽が激突しますわな、あれで衝撃波で、あそこの村が軒並み吹っ飛ぶっていう風に書いたんですけど、まったくやられなかったですね。あと、『宿命』、ナイトヘッドになってる回でも、あそこ、工事現場、どーんと超能力で破壊される筈だったんですけど、それもやられてないですね。
      『TOMCAT』確かにその、現実にあるものが、美夕たちの力によって何か蒙るという風な威力表現の描写ってのは、一切なかったですね。
      『早見』美夕は平野監督、今回特に実写指向でやってますから、当然そういう物理的リアクションってのは、やりたくてしょうがない筈なんですよ。『宿命』でも、ぶつぶつ言ってましたが。それができなかったのは、まあ、種々の制約によるモンだと思います。
      『TOMCAT』だから、そういう物理的なリアクションを描かないと、或る種、精神波的なモノの、単なる火とか氷と言うのは、表象に過ぎないんではないかっていう風に。だからたとえば超能力モノなんかの、ドーンとやったら、なんかワケの判らないエフェクトがミョーンと行って、う〜〜〜っつって、ウケの芝居があって、っていう、ああいうつまらなさに通じるものがありますよね。
      『早見』そうですね、だから、どっちかと言えば『帝都大戦』ですよね。
      『TOMCAT』あれはもう、延々、あーうーあーげーっていう話だから……(笑)
      『早見』あれは私は、合成好きだから、合成でない超能力描写で、香港アクション、どうかなと思ったんですけど、物理的力の作用がなければ、それはあまりにアニメ的過ぎる。
      『TOMCAT』そうですね、なんかバーンとか言って光がビャーンとか飛んで、なんか、アーッとかいう感じですよね。
      『早見』そこはもっと、具象的なモノを目指してはいたんですね。

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      TV「吸血姫美夕」大昔語り・5

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        『TOMCAT』そうですね、だから、かえって、(神魔が)人間といると、なにかマズいコトが起こってしまうから封印するというと、人間との関係の上で成り立つ存在っていう風に逆になっちゃうでしょう。だからその辺がね、しかもその、OVAの場合だと、西洋神魔くらいしか出てこないじゃないですか、西洋と東洋の対比みたいなところは割と文化的な枠だから、文化的な意匠じゃないですか、だから、文化的な意匠のホラーじゃないですか、あのOVAの美夕ってのは。
        だからわかるんですよ、西洋神魔だって言われて、ラヴァは西洋神魔なんだよ、で、西洋神魔の仲間が、ちょっとモーホー入ってるヒトが取り返しに来るんだよ、って話も、まあ意匠なんだろうなってコトでわかるんですが。今回なんかあの、第三世界に行ったら、第三世界でお面みたいな奴が出て来ると、っつーコトになるってーと、第三世界神魔ってのもあんのかよ、とかね、インド神魔もあるんだろう、とか。
        『早見』それはあります。だって香港神魔出てますから。
        『TOMCAT』そうなんですよね。だから、「国って関係ないじゃん、神魔とはよぉ」って思ったんですよ。だから、国、或いは漠然と文化圏、そういうモノってあるの?西洋神魔ってからには、人間の世界の西洋という文化的概念が神魔界にも反映してるってコトでしょう、で、第三世界行ってジャングルの奥地行くと、オンゴロのお面みたいのがブワーッと出て来るっていうと、やはりそれは人間の文明の、要するに西洋と東洋以外の第三世界ってコトじゃありませんか。で、今度は中華神魔……えっ、『中華』まで特定しちゃうの?っていう話になってですね、だからやっぱり、人間との関わり合いの中で出て来るのが神魔なのかなっていう風に思ったんですよ。
        『早見』あのですね、まず一つには、私は、書く上で必要のないコトは監督にはまったくきかないんですよ。なので、かなりブラックボックスになってるところはあります。これは既に公表されてるからアレなんですけど、ビデオの時から監督は『河童の三平・妖怪洋魔』がやりたかったんです。そうすると河童の国があるじゃないですか、だからそういう考え方が基本にあるんだと思います。
        『TOMCAT』監督のアタマの中では、神魔は邪神のようなモノであるといっても、全く人間とは関係ないワケではなくて、一種の観念と言うものがあって、人間の観念の中にはある種の小世界というモノがある、たとえば地中海世界なりとか、西洋世界ってありますよね、それと二重写しに、神魔の世界があるっていう発想なんでしょうか?
        『早見』そうらしいですね。平野監督は、少しづつしか話を出して来ないんですよ。その時に必要なコトしか言わないんですね、ボクも必要なコトしか聞かないんです。「これは何なんですか?」って、ずーっと問い詰めないんで、明らかにはなってないんですけど、とにかく『河童の三平』観てくれと。じゃあ、こういうコトなんだなというのは、これは言葉では説明しづらいです、感覚的にわかってるコトなんで。
        『TOMCAT』
        大体これでわかりました、やはり意匠の問題ではあったワケですね。意匠の問題といっても観念の、とか、そこのレベルの話だったんですけど、後半になって来ると、或る物語があって、物語を語る装置なんだと、美夕も神魔もっていう風なトコにシフトして来ると思うんですけど。たとえば「神魔の旗」ってよく言いますけれども、あれはホントにあの幻三兄弟ってのは、神魔である必要すらない、なんかあの、山怪ですよね、要するに、山怪が里に降りて来て、異類婚の話ですよね。だからその山怪ってモノに対して、物語の構造上、それは、神魔ってモノを当てはめたってだけの話であって……。
        『早見』これは、どうも……TOMCATさんの話は難しい(笑)。いや、これはですね、『河童の三平』にそういう回があるんですって。えーっと、ボク、前半しか借りられなくて、後半観られなかったんですけど、これ、監督が非常にやりたがった回なんですよ、だからこれは、そういうアレがあったんだそうです。
        『TOMCAT』単にああいう話がやりたかったんですね(笑)、監督の要望として……。
        『早見』ええ、そうです。ボクは絶対出来ないと思ったんで、ヒトに振ろうとしたんですが、流れの関係で、守護神魔について出さなきゃいけなかった。
        『TOMCAT』守護神魔について……いいところに話が及びましたね。

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        TV「吸血姫美夕大昔語り」・4

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          『早見』残虐については、ホラーとも称さないでくれ、と。だから私が、『ダークファンタジー』って、一応つけたんですよ。しょうがないですからね。ただまあ、こっちもなし崩し的に、中学生にしちゃいましたけどね、後で。
          『TOMCAT』中学生に拘ったのは早見さん?
          『早見』いや、監督もそうです。
          『TOMCAT』14歳であると言うコトに拘ったのは、最初の美夕から……?
          『早見』そうとも言えないんですが、やっぱりねぇ、女子高生の話じゃないだろう、ってコトだと思います、それは。
          『TOMCAT』女子高生だと、もう大人って感じですね。中学生くらいが過渡的でしょう。14歳くらいだと、子供みたいな14歳もいれば、大人みたいな14歳もいる、その辺過渡的なところがあるんで、14歳という……
          『早見』……そうですね。14歳って観念的な少女の典型だろう、みたいな。
          『TOMCAT』美夕って現代の話ですよね、TV版美夕が現代の話であるとすれば、高校生にすれば風俗って搦んで来ますよね、そういうのがいやだったのかしら?
          『早見』それもあると思います。風俗的なモノは出さないっていうコトで。1話でポケベル出すのに、かなり勇気がいりましたけど、案の定、見事に時代から外れましたね。
          ただ垣之内さんがラフデザインを出されて来た時には、ルーズソックス履いてたんで、それはもうデザインの問題なんで、私は何も言う筋合いはなかったんですけども。ルーズソックスは流行り物だから如何なモノか、みたいなのも、上から来ましたけどね。千里とゆかりが履いてて美夕と久恵は履いてないっていう、ちゃんとだから、分けてあるんですよ、デザイン上。
          『TOMCAT』あとは、世界観の構築ってコトで、具体的なコトを細かく聞いて行きますんでまあ、ちょっと考えつつみたいな観じで、まず最初に神魔とはなんでしょうという非常にオーソドックスなところから。まず、はぐれ神魔ってなんなんでしょう?
          『早見』なんなのかよくわかんないんですよ。
          『TOMCAT』最初の頃って結構、カッチリした早見さんなりの神魔観ってありましたよねぇ。具体的な言葉としてというか、たとえば早見さんが描いた話における神魔って、割と定型があったと思うんですよ。たとえば、非常に観念的な遊戯者であったりとかいうような、そういう定型があった筈なんですよね。それが後半になってくると全然違って来るというのが……。
          『早見』それはまあ、何も考えてないからですけども(笑)。ビデオで、神とも魔物とも呼んだというコトが、ややこしいんですよね。OVAだといいけど、TVで流れるから分かり易くというコトで、とにかく人間とは異なる種族があるというのが監督の考え方なんです。監督は「全部、オバケ」って言ってましたけど。
          『TOMCAT』たとえば、初期の頃の神魔観では、やっぱり人間より前に住んでいたってコトにはならないですよね、あの神魔では。人間というモノがいて、人間の観念が育って来て、そのシンボリックな存在として神魔があるって形になってますよね、デザインなり、たとえば名前でもそうですよね、一種の概念ですからね。名詮自性というんですか、やっぱり、名前即神魔の属性ってコトになってるじゃありませんか、最初の頃って。
          『早見』えーと、それはですね、各話の担当脚本家の仕事なんですよ。
          『TOMCAT』この中でなんかちょっとそぐわないってのは、斑輝(第9話の神魔)さんですか?
          『早見』これはなんでだろうな?猫の目だからでしょうね、多分。えーっとね、『虎よ!虎よ!(アルフレッド・ベスターのSF)小説』かな?。あれ、チェシャ猫なんですよ、それでニヤニヤ笑いながら消えてくコトになったんですけど、それでその時丁度『虎よ!虎よ!』読んでたんで。
          『TOMCAT』あの、ガリー・フォイル、あの顔の痍のイメージですか。ブチで光ってるってなんだろう?って最初思ったんですよ。黒猫だし。
          『早見』これはブチじゃなくて、タイガロイドってのがあった筈なんですけど……。(「虎よ!虎よ!」に出てくる物質)
          『TOMCAT』蛇華ってのは華陀(注:古代中国の名医)ですかね?
          『早見』それは山田さんに聞かないとわかんないですね。これは、みんなねぇ、神魔の名前は苦労するんですよ、響きを重んじると、カ行の名前がエライ増えるんですよね、それで、後の方で変えてくれって言われて。そういうのも、小中(千昭)さん、うまいですね。難しくて読めなかった。
          『TOMCAT』これ(蠱奸)、なんて読むんだっけ?
          『shof』まじかん。
          『早見』最初ねぇ、蠱惑がわかんなかったですよ(笑)。
          『TOMCAT』早見さん、作家として問題じゃないですか?(笑)でも、『鱗翅の蠱惑』って(鱗翅も蠱惑も)両方難しいもんね。
          『早見』まあ、いいんですけど、神魔と言うのは、妖怪というより邪神に近いモノであるというコトでした。
          『TOMCAT』邪神というのは、クトゥルー邪神というふうに解釈して宜しいワケですね……。
          『早見』いや、クトゥルーとは限定しないですけども。クトゥルーはクトゥルーで「イクサー」シリーズがありますから。まあ、あのようなモノと。
          最初は、そんなに土着的なモンではないと。まあ、後半で段々崩していきますけど。だからあの、神魔っていうのは、或る程度OVAで考えてたところがあるんで、そうすると、事件起きない場合もあるだろうと、それで、困って、宿命的に人間を滅ぼしてしまうと。
          要するにCDの新吸血姫美夕で、神魔界というモノが設定されましたけど、それの話をまたやると、26話それで終わっちゃうんですね。なんで封印しなきゃいけないかという話も、やり始めると、入りきらないんですわ。なんで、そこんところはもう、デフォルトにしちゃえ、というコトだったんですね。最初の時点でも、人間の弱さにつけこみ、或いは人間を愛する餘り、怪奇な事件を引き起こしてしまう、というコトで、どうやっても人間世界になじめないから、封印されるんだということにしちゃったんですね。
          『TOMCAT』そうですか、そこら辺で判らなくなるのが、なんか、邪神かなんかだとですね、人間とは無関係じゃないですか。
          『早見』いや、あの、人間に興味はあるんだと思います。

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          TV「吸血姫美夕」大昔語り・3

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            『TOMCAT』(OVAでは)かなり計画的に全4巻が出たワケですよね。素人目で考えて、一巻当たったから二巻も出しましょうと言う作り方ではなかったですね。4巻であの通りの世界観で完結するんだと言う作り方で、非常に恵まれていた作品であった、と。そういう意味でTVアニメで深夜枠でってコトで考えて、それで26回でってコトを考えると、クォリティー面で比較したって意味はないですよね。
            『早見』そうですねぇ……あと、深夜枠で、ビデオ売る事込みでっていうコトでお金が出るって状態でもなかったんです。まあ、勿論ビデオ化する予定ではあったんですけども、予算はそんなになかったです。ただまったくなんにもしないワケにいかないんで、声優さんは非常に豪華ですよね、あれはあの、音響監督の本田(保則)さんの力もあるみたいですけど、平野監督の人徳だと思いますよ。監督、嘘つかない人ですし。CDドラマで西洋神魔編ってのを6巻やりましたけども、その時に関わった方がかなり出てらっしゃいますしね。
            美夕は声優さんには非常に評判良かったです。(アフレコに)絵が入らないんで苦労されたんですけど、かなり面白がって下さって、で、この前、幻の二話のアフレコがあって、行って来たんですけども、長沢美樹さんとか、かないみかさんとかが、続きつくりましょうよって監督に言ってたんですね。あんまり偉そうなコトは言えないですけど、ああいうドラマってのは、今あんまりないですよね。
            『TOMCAT』確かにないですね、アニメにはアニメの作り方があって、って形ですね。
            『早見』……なので、かなり難しい処もあるけれどもそれだけに面白がってやって下さってたんで。声優さんの話すると長くなってしまうんですけど。
            『TOMCAT』では、平野監督の印象を。
            『早見』平野監督は、物凄く真面目なヒトです!冗談を言ったコトが、一年半で一回しかないです。美夕をゲーム化すると言う話がちょっと出た時に「美少女ゲーにしよう、美夕と付き合って、最後血ぃ吸われて終わる」と。冗談、それだけでした。
            だから『冷羽が来た』の回で、あそこに、山の中の女がいて、巡礼の父親とちょっとアレな感じになりますよね。最初私『倒れ込む』ってのを書いたんですよ。そしたらあの、クレームが来て。今非常に厳しいんですよね。「その程度のモン、なんで出来ないんだ」とか監督が言ってるんで、僕が、「じゃあここで、波がザパーンって碎けるってやりましょうか?」と、場を和ませようと思って言ったら、監督が「おまえ、山の中でどうやって波が出るんだ」と、真面目にリアクションされて困ったんですけども。
            (往年のハリウッド映画では、ラブシーンをそのまま描けないので、海で波しぶきが打ち寄せる、などの暗喩が用いられた。)
            『TOMCAT』残酷の描写についても?
            『早見』ガーっと申し送りのFAXが来るんですよ。「美夕が中学生と言う設定になっているが、昨今の事情等もあり……」丁度神戸(酒鬼薔薇事件)の事件の時ですね。「高校生にして欲しい」。じゃ、高校生ならいいのかっていう……。
            『TOMCAT』「血糊、血飛沫の表現については、他の色で代用するのではなく、透過光表現にして欲しい」
            『早見』それで透過光にして、やったら、そこへポケモンが来て(TVの「ポケモン」で画面の点滅が激しくて、発作を起こす子どもがいたため、それ以降、「テレビは部屋を明るくして離れて見て下さい」と注意が出るようになった)、透過光も、TVのOAでは納品前にビデオ編集で、かなり透過光を切ったり輝度を落としたりしてます。
            だから、美夕の場合は深夜でもあるので、生々しい感じを出そうと思ったんです。ただ、それの縛りがもう、きつくてですね、ちょっと上品(に)なっちゃいましたね。あれ、おかしいと思う人は絶対おかしいと思うでしょうけど、胴体絞められて苦しんでるでしょ?首絞めちゃダメだっていうんですよ。菜っ切り包丁で人、刺したり。やりたくてやるわけないですよ。
            放映当時、事故で(早見曰く、秘密という約束を製作サイドとしたので具体的には言えないとのこと)画質が荒れて、某掲示板で「ビデオにして売る気でやってるのか。消費者をなめるな!」みたいなことが書いてあって、僕はキレる寸前で、かろうじて踏みとどまりましたが、いまなら反論しに行きますね。TVをやってるスタッフは、TVが全てなんですよ。「誰も本放送で、不細工な絵が見せたいわけがない! TVで作るものは、本放映が最上にしたいと決まってる」、って、顔合わせると言ってました。僕は自分を「消費者」と呼ぶ人の心根に、よりキレそうになりましたね。今は平気で言うけど、視聴者の誇りも捨てるのかと。
            あと首を連想させるモノは一切ダメ。あの当時は、サスペンスモノでも、それでかなり中止になった奴があって、甚くは、美容院のセットでよくかつら載せとく台あるでしょう、あれが首に見えるからダメってのあったんです。それくらい過敏な反応があったんですね。
            『TOMCAT』……これ、(事情を公開する上で)使えないワケですね?
            『早見』いや、これはいいでしょう。多分監督だったら、それは、言うべきコトは言った方がいいって言うと思います、これに関しては。
            本当にまずいかも知れない話で、もう時効かな、と思うのは、音響の話とかね。あれ(名前を秘する「美夕」以外の作品)とかねぇ、音響監督の頭越しで監督が指示出してるみたいですね。平野監督は、絶対それはやりません。いちいち音響監督を通すと。そうでないと、みんなが勝手に意見言っちゃうと、ごちゃごちゃ。
            私もアフレコ行って、「おまえ何も言うなよ」と言われてたんですけども、それは判ります。二時間とか三時間とかで上げなきゃいけない時に、解釈がどうかって話になると、音響監督一系統でやってないと、大変なんですよ。で、ちょっとまぁどうしようかって時に、監督は或る程度のコトは言いますけど。またそういうので混乱してる時に限ってですね、(スタッフの一員が)自分の解釈を述べ始めたりすると混乱がすごいんで。そういう回もあったんですよ。「〜じゃないかなあ」とか、ミキサールームの後ろの方で、とぼけたことを言ってしたり顔しててね。

             

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            TV「吸血姫美夕」大昔語り・2

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              『TOMCAT』この辺で、美夕に関わるに到る経緯を窺いたいんですが。
              『早見』これはですね、2年くらい前ですけど、「今度TVで美夕をやるんで、「ノベライズ書かないか」、といわれたんです。小説家ですから、一も二もなく、「あ、やりますやります」って言ったんですけど、その後、音沙汰がない。で、しばらくしたら、シリーズ構成の、前任者の方が降板されちゃったんですね。替わりがいなくて困ってると。
              で私がたまたま、『美夕フィルムコレクション』て秋田書店から出てますけど、それでフィルムストーリーを書いたんですね。で、「美夕のコト知ってる人間がとにかくいないんでなんでもいいからとにかくおまえやんないか」と言われて、悩んだんですけど、なんせ脚本書いたコトなかったんで。(注:これは早見の記憶違い。激安アニメビデオの脚本を書いている)
              ただまあ、美夕はねぇ、ビデオが凄い作品なんで、それのリメイクやるってリスク大きいですよね。どうやったって褒められるワケねえんだから。リメイクやって褒められたヒトってまずいないでしょ?だから暫く考えたんですけども、ただ、一応モノ書く人間として、自分が断って、ヒトがやったのを観て、「あ、オレならこうするのに」ってのは、あまりフェアな態度ではないですね。
              それでまあ、やっぱり自分で受けて失敗するなら自分で痍を負わないと、それは、よくないなというのがあって、やってみようと。まあ、勿論、美少女が書けると言うのが重大な動機だったと言うと今はまずいのか。それで、打ち合わせに行ってみてまず、その時点で、かなり押してたんですよね。で、「とにかくオーソドックスなホラーやりましょう」と言い出して。
              『TOMCAT』ホラーで行くってのは最初から決めてたんですね?
              『早見』はい。アニメに関しては或る程度素人ではあるんですけども、まあ、ホラーは一応専門なんで。リメイクと言うコトで監督なんかもどう捻るかというところで煮詰まってらっしゃったらしいんですけども、こっちはもう素人なんでノコノコと行って、今、捻った作品が非常に多くて、特にTVでホラーのストレートなモノがないんで、ホラーファンが見たら、「なんでこんな当たり前のをやるんだ」って……まあ、そう言ったヒトもいましたけど……いうくらいに、やったらどうですか、ああじゃあ、って話になったんですけど。
              監督に会って一番最初に言ったのは、要するに『ウルトラマン』の一話をやればいいんですね、と言ったら「そうなんだよ」みたいな感じになって。あのつまり、みなさん実相寺やりたがりますけど、第一話、ベムラーの回って誰も覚えてないでしょう。あれをまず堅めとかないとダメでしょう。だから、実相寺じゃなくて飯島敏宏(注:正しくは円谷一)というコトで第一話は何の捻りもなく、フォーマットのつもりで……
              『TOMCAT』確かに、颯爽と現れて化け物を倒すという話になってますね。
              『早見』ええ、で、一話で美夕の紹介をやって、二話から本題に入るという、コトにはなってたんですよ。

              吸血姫美夕 | permalink | comments(0) | -

              TV「吸血姫美夕」大昔語り・13(終わり)

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                (鳥の眷属について)
                『早見』鳥神魔はですね、これは、とにかく、美夕を狙ってる一族がいるっていうコトは、事前に監督は言われたんです、それを鳥にしたのは私です。漫画の美夕は鳥が好きなんで、垣之内さんには悪いなぁと思ったんですけど、思い付いちゃったんですよ。というのは、『田園に死す』も『陽炎座』も原田芳雄が出てきますね、同じような役どころで。まあ、謂ってみれば間男ですけども。あれが着てる物っていうのは、あれ二重廻し……
                『TOMCAT』合いトンビですね。
                『早見』トンビですね、じゃ神魔トンビって名前にしようっていった時点で鳥にしちゃったんです。
                『TOMCAT』ああそうなんですか、じゃあ、要するにトンビを着ているからトンビだと。
                『早見』ただ鳥にしてみると、お母さん鳥追いの感じになるんで、いいですよね。だから、ずっと作業が盛り上がって来ると、感覚でやってることが段々ハマってくるんですよ。これは理詰めで考えるよりも、感覚を信じた方がいいらしいです。
                 ホントはボクは理詰めで考えたいんですけれども、理屈をねぇ、思い付かないんです。小中さんなんてのは完全に理のヒトなので、総てのコトが完全に説明できますね。というか、脚本家というのはそうでないと、脚本を通すのが難しいんです。というのは、普通の場合は、大勢のヒトが集まった中でプレゼンテーションしなきゃいけないからです。美夕は私と監督でしか打ち合わせしてないんです。誰も口挟んでないです。なんで、やれたってのがあって。
                『TOMCAT』やっぱり、じゃあ、台本会議なんかの、経験ってコトですか?
                『早見』小中さんが?……だと思いますね。
                『TOMCAT』やはりプレゼン能力ですからね。
                『早見』だから、脚本家の方ってのは、非常にプレゼンテーション上手いですね。その点
                では、美夕は非常に、誰にも説明しないで済んだんで……。
                『TOMCAT』……非常に早見さん向きだったというコトですね……。
                『早見』えーっと、『母親との関係がメインで描かれているが、その真意は?』それは、前にいいましたけど、私に父親トラウマがないせいです。小中さんもないんじゃないかな、両親を尊敬していらっしゃるから。父親コンプレックスがあるとねえ……話が歪みますね。
                『TOMCAT』ああ、なるほどね。母親トラウマはあるんですか?
                『早見』いや、ないです、だって娘じゃないもん。
                『TOMCAT』つまり、家族的な欠落がないから……。
                『早見』う〜〜〜ん、まあ欠落っていうか、もう反抗期過ぎちゃったんで……で、最終的な話は『美夕昔語り』のアレになるコトがわかってたんで、そうするとやっぱり、近代的自我の芽生えじゃないですね?『アニメージュ』には「喪われた日本の原風景が描かれている」とか書いてあって、喪われたって、どこにあんなモンあったんかい、と思うんですけど……。
                『TOMCAT』ま、仮想的なってコトでしょうね。
                『早見』女の子像で、ボクはもうつみきみほ原理主義者なんで、或いはスケバン刑事なんで、そういう男のドラマってのがあって、あるんでしょうけど、今回はその、母親と娘のドラマの方が書きやすかったんでしょうね。あと、冷羽との対比で考えてもやっぱりそうなりますね。

                『TOMCAT』冷羽は父親だと?
                『早見』はい、だから美夕ってのは戦闘的なキャラクターでもないんですよね。
                『TOMCAT』その辺一くさりちょっと語って戴けますか。
                『早見』う〜んと、ビデオでは美夕は非常にコケティッシュな……っていうんですか?
                『TOMCAT』そうですね、小悪魔的な感じですね。だからその辺は違うでしょう、寡黙で、っていう……
                『早見』一つは、私が書くと大体ああなっちゃうっていうのはあるんですが……
                『TOMCAT』要するにやっぱスケバンラインですよね。
                『早見』ただその時にね、父との対立っていうのは、あんまり思い浮かばないんです。スケバン刑事だってガラスの仮面だって、父親、関係ないでしょう?
                『TOMCAT』見てないんですぅ(笑)
                『早見』で、父と子の確執ってのは、ボクあんっまり好きじゃないんですよ。
                『TOMCAT』こないだ言ってた父性の問題ですかね?
                『早見』う〜ん、アレですね、『ジェダイの復讐』でね、ルークが「お父さんはそんなヒトじゃない」っつった時に、ああこりゃダメだ〜と(笑)。だから、父と子の相克って言ったら、やっぱボクらの年代だと『巨人の星』みたいな感じになるじゃないですか、それ女の子にした場合にはそういう関係にはならなくなっちゃうんですよね。で、ボクは対立のドラマというのはあまり書かないし、また、対立の観念が多分欠けているんだと思います。だって監督と対立したコトってないですもん。一回だけです。最初に門之園さんがキャラデザイン描かれたのを見て、これロリコン入ってないじゃないですかっつった時だけです。その時監督が、もうロリはいいよって言ったんです。
                『TOMCAT』まあ、平野監督って一般的にはロリで売ってるってイメージありますからね、とにかくコケティッシュでロリータなキャラを可愛く描くって……
                『早見』で、それはいいよって言われた時、あ、そうなんだなと思って……もう一つは、やっぱり、愛玩物としての少女だとつまんないですよね……。
                『TOMCAT』いやまあ、物語を語る際に、愛玩物としての少女では、対象になってしまうってコトですね、主体ではない。
                『早見』それだと、14歳にした意味がない……まあ、最近14歳っつってもなぁ……。
                『TOMCAT』最近エンクミ(遠藤久美子)とかいってるしぃ〜、あ、あんなトコに(遠藤久美子の)ビデオあるしぃ〜(笑)(注:壁に遠藤久美子のカレンダーもあった)
                『早見』だから、そもそも対立の概念がなくて、また古い日本というか、アレで行くと、近代的自我の確立と言うドラマではなくなって行くはずなんで……。
                『TOMCAT』近代的自我の確立と言うと、夏目漱石とかそういう、あっち系ですか?
                『早見』……まあ、森鴎外とか、なんでしょうけど、明治の時にあったコトは確かですが……
                『TOMCAT』近代的自我は多分確立された物じゃなくて教育された物ですよね、今ある近代的自我っていうのは……
                『早見』はい、あの、西欧的な物ですね。
                『TOMCAT』そうですね、西欧的な個人主義、近代的自我ってそれですね。だから日本には近代的自我なんてなくてですね、とりあえず、近代になっちゃったんだから近代的自我を持たなきゃなんないんじゃないの、ってトコで知識人が足掻いてる、それが明治の或る種のエートスだってコトになってますよね、ただやっぱり、一般庶民、下凡の衆ってホントにそんなコト考えてたかってぇとそんなコト考えてないですよね。なんとなく、黒船来ちゃったしよぉ、なんか、ちょんまげしちゃいけねえんだってよぉ、ってな感じで、なんとなく来ちゃってる……
                (時間は矢のように過ぎゆき、話はとどまる所を知らないが、この辺で……)

                美夕大昔語り ・ 了

                吸血姫美夕 | permalink | comments(0) | -

                TV「吸血姫美夕」大昔語り・12

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                  (「うつぼ舟」に戻って)
                  『TOMCAT』いや、だって変じゃないですか、いきなりだって、ブランコに乗ってるお父さんの隣りにいきなりポーっと出てきてですな……
                  『早見』あの、冷羽は、人間の前には姿を現さない筈なんですよ、ていうか、変でしょう?
                  『TOMCAT』歴然と変ですね。
                  『shof』あの姿で現れられないでしょう?
                  『TOMCAT』それが最終回ぐらいの時も出てくるよね?で、見た奴がみんな変な子がいたって話になりますよね?
                  『早見』あの、ただ、私の芸風として、小説書いてる時も一緒なんですけど、異常な事態が進行していても誰も驚かないっていう芸風がありまして(笑)……ただ、『うつぼ舟』の時は、意図的にあそこで冷羽が出てくるのは変だという、だから変に見えるように描いて欲しかったんですよ……
                  『TOMCAT』だから、変なんだけど変に見えないんですよ、あれね。あの男だったら冷羽との組み合わせが全然不思議じゃないんですよね。だから、ポーンと出てくるんじゃなくて、カメラ振ったらいきなりいるとかね……。
                  『早見』これはちょっとなんていうか、アニメのむずかしさかもしれないです。
                  『TOMCAT』なんでもアリですから、要するに変さが出せない……。
                  『早見』『ツィゴイネルワイゼン』だと、まあ、あれは鈴木清順で撮影があのひと(永塚一栄)だからというのもあるでしょうけど、女の子が出てくると出てきた時点で変でしょう?あれはね、アニメはやっぱ出来ずらいです。
                  『TOMCAT』そういうひとがでてあたりまえのメディアがアニメですからね。
                  『早見』村井さだゆきさんが『ねらわれた学園』(テレ東の深夜枠。後述の『ATHENA』……は違うか。とにかく深夜で超能力もの)で意図的にあたかも偶然映ってるように子どもを出したりする仕掛けつくってますけど、ああいうのはやっぱアニメではやりづらいですね。あとアニメでやりづらかったのは、また『美夕昔語り』に戻っちゃいますけど屋台崩しやりたかったんです。『田園に死す』だし『陽炎座』だから、あれ、小屋バーンと崩したかったんですけど、それは出来ないよ、と。『となりのトトロ』に於ける男鹿和雄(美術監督)さんくらいのヒトと、当時はCGが少なかったため、あっ、というものはできないでしょう。
                  『TOMCAT』じゃ、チャッチく見えちゃうから……。
                  『早見』そうです、技術的に無理です。何ヶ月とかかるでしょうね。
                  『TOMCAT』そうですね、確かにその、映画なんてのはみんな、コスト対パフォーマンス比じゃないですか、これだけのコトをスケジュール伸ばしてでもやる意味はあるのかっていう、それですからね。結局その、個々のスタッフのここやりたいってのを全部通してたら纏まんないですよね。
                  『早見』だから「美夕昔語り」って、アレ、最初書いたら、40分くらいになっちゃうって言われたんですね。バシバシ切りましたけど……あれ、もっといろんな道具入れてやったんですけどね。美夕が踊るコトになってたんです、『陽炎座』なんで。でも、それもちょっと演技的に無理だったんで……。
                  『TOMCAT』踊りは難しいですね。前に言ったと思うんだけど、非常にコスト対パフォーマンス比がよくて、あれはもうほんと口パクとかね、ぴゃっとセルちょっと動かすとかそれくらいのコトでやってるんだけど、あたかも意図した効果であるかのように見えるじゃないですか。それで効果が出ているワケだし、非常にあれはお得だったな、と。
                  『早見』あれはやっぱり、監督がコンテ切ってるせいも大きいです。劇中劇というものを見せるというのは、これはこれでまた難しいんで……まあ、『ウテナ』やってましたけどね。あれも寺山修司だな、そういえば。
                  『TOMCAT』まあ、理に落ちてるトコありますよね、要するに劇中劇だから、カット割らずに1カットで長廻しだと、で動かないんだと、いうのは、非常に理に落ちるトコはあるですね、だから劇なんだよ、と。

                  吸血姫美夕 | permalink | comments(0) | -

                  TV「吸血姫美夕」大昔語り・11

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                    (『うつぼ舟』)
                    『TOMCAT』だから、あの男にはとにかく、みんながなんかあの、あれはだから要するに世界に愛される人ですよね、あのヒトって、周りのヒトは大体みんなあの男を愛してるワケですよね。
                    『早見』いや、それが私、わかんないんです。
                    『TOMCAT』なんであの男は愛されるんでしょう。
                    『早見』私もね、それが疑問でしょうがないです、みんなねぇ、「うつぼ舟」いいっていうでしょ? 私別に全然好くないんですもん、好くないというと違うんですけど。
                    『TOMCAT』あれはだから、ドラマとして好いんですよ。あれはだから、ありがちな話なんですけど、三石さんの芝居も好かったし、ドラマとして非常に……ええ。
                    『早見』あと、田中秀幸さん、あのヒトはすっごいいい方なんですけども……。
                    『TOMCAT』田中秀幸さんと三石琴乃さんだからああいう逃避行の話がね、で、しかもあのひなびた電車で、朧雪が舞っておってみたいな。
                    『早見』ただ、あれがどういう構造の話なのかは、監督にしか説明してなくて、ほかは誰も知らないんです。演じるヒトも演出したヒトも、判ってないんですよね。
                    『TOMCAT』あれはとにかく、早見さん所謂ところの、ポップを目指そうと、
                    『早見』ていうか、ポップにしなきゃダメだって謂うコトだったんですけども、あんまりそうなっていませんね。
                    『TOMCAT』うつぼ舟はとにかく、ドラマとして成功したんだと思いますね。だから、言われるように、土曜ワイド劇場なんですが、土曜ワイド劇場がつまらないってワケじゃないワケであって、非常にアリガチな話なんですけど、繰り返し語るっていう素型があるわけですよね、
                     世間に疎んじられた男がですね、世の中の片隅で小さな幸せを、みたいなアリガチな話あるじゃありませんか、ああいう話ってのはどこんでもあるワケです、でも、どこんでもあるからもう語るなっていうのと違うワケで、同じ話は何回でも語れるワケですね、語り口と演者ですよね、それはドラマってモノはみんなそうですよね。なんか憧れの彼とすったもんだあったウチに、くっついて、万々歳、涙涙、っていうのが大概の恋愛ドラマのパターンですよね。
                     だから、意匠だと思うんですよ、意匠と演者、だからアニメのところで、物語を重視したところで、あれが非常に今までの美夕的なノリで言えば、間違ってはいないワケでしょう?で、早見さんはそこで、まあポップと表現されたようなところでやらなきゃダメだろうと思ったんだけど、今までのドラマ的なところで流しちゃった結果、非常になんか、演者もあれば、話も要するに一本道ですから、要するに、奥さん死んだんだかどうだかわかんないけど、奥さん突き飛ばして逃避行っていう、心中モノですよね、心中モノってとにかくねぇ、上手くやれば盛り上がるんですよ。
                    『早見』いやあれねぇ、あの、その筋の方からも褒められて……まあ、小中(千昭)さんですけどね(笑)。で、なんだ、オレってそう言う、演歌の花道な奴だったのかなと思って
                    ……(木亥火暴!!)
                    『TOMCAT』あなた、演歌の花道なヒトですよ(笑)
                    『早見』そーゆーのやなんですよぉ(笑)
                    『TOMCAT』だから、自分の内なる東北人に向き合わなきゃ。
                    『早見』だからねぇ、私はね、都会派だと思ってるんですよ(笑)。だから、それはねぇ、意識しちゃうとダメなんですよ。それで倉本聡北海道行っちゃったじゃないですか、あのヒト都会書くとホントに上手かったのに。それで北の国からでUFO出してるでしょう?だからオレ、今後そっち進まなきゃいけないのかと思ったんですけども。
                     だからあの話自体が決まってたところにその時点で、冷羽と父親の関係が出てきたんで、それが一致するようになったんです。だからあの、まあ、自分で認めたくないんですけど、冷羽が来たの回と矛盾してますよね、その時点ではだってわかんないんですもん、冷羽の出自が。
                    『TOMCAT』だからあれ、父親ってテーゼはあそこで出てるんだよね、もう、出てるけれども、とりあえずやっちゃえーって奴が冷羽なんだよっていうふうな売り方してるワケでしょう。だから、何故あそこであの、父親というには歳が近すぎるし。で、あの男は何故みんなが愛するのか、登場人物みんな愛してますよね。だから奥さんだって、遣り方はどうあれ、あの男が必要なワケですよ、みんながあの男を欲しがっているワケですよね、玉の取り合いですよね。で、結局、男の方はなんだか煮え切らない態度で、今のちっちゃい幸せがいいんだよってところで、非常にダメな奴ですよね、
                     ダメな奴が北に逃げるってのはねぇ、日本人の感性に訴えるんですよ。電車に乗って、雪が降ってて、海岸で、って謂うと日本人泣いちゃうワケですよ。そこがあんまりちょっと、意図と違ったのかも知れないけれども、ドラマとしては間違ってないと思うんですよ。だからあそこで、うつぼ舟って何だったんだって話が出て来るワケで、今度は。渡海伝説と寄り来る物じゃ違うじゃねえかって話まで出て来るワケであって。赤ん坊に退行するって筋道はわかるんですが、だからドラマと噛み合ってないってだけの話であってね。
                    『早見』いや、あれはね、ラストだけ決まってたんですよ。
                    『TOMCAT』あの盥に乗って、ツィゴイネルワイゼンだよんって話が?
                    『早見』はい。で、こういうラストにしましょうって監督に言ったら、じゃあおまえ書け、他のヒトに書けねえだろう。あのですね、シリーズ構成の場合は、ラストシーンを決め込むコトはできないんです。それは各話脚本の方の領分であって、決めちゃうのは失礼に当たるんです。えーっとですね、あなたの家、マンションの話、あれは最後の美夕の一言を思い付いた時点で、じゃあこれで〆めないといけないから、ヒトに振れないっていうんで、ホントは書く気なかったんですけど、書いたら、また褒められて……。
                    『TOMCAT』ああ、褒めた人間としては責任を感じますね。

                    *一本目終わり
                     

                    吸血姫美夕 | permalink | comments(0) | -

                    TV「吸血姫美夕」大昔語り・10

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                      『早見』まあ、冷羽は今回監督が非常に力入れたキャラクターですけども、要するにありゃあ、イクサー1に対するイクサー2です。そう謂えば判るだろうと言われたんです。それでボクは判りました、と、そこに言葉での説明は要らないんですよ。繰り返しになりますけど。ライバルキャラっていうのはこういうモンだ、と。
                      で、冷羽はですね、各話の脚本の方が非常に苦手とされたモノで、設定の前にキャラクターデザインが出来てたんです、冷羽松風の。で、それ見てこれがイクサー2だって言われて、冷羽と松風ってのはこういうふうな関係だ、ごく簡単に説明を聞いた時点で、もう台詞廻しはこれしかない、どういうふうに喋るか、アタマの中に浮かんじゃったんですね、ところが定義をしてないワケです。監督もそうでしょうし、自分の中では自然に書けてるんで他の方に説明しづらいんですよ、それでかなり苦労をされました。
                      松風はねえ、……私が名前を付けたハズなんですよね、。あれ、『八甲田山死の彷徨』(映画『八甲田山』の原作)に出てくるはずなんで。やっぱり雪のイメージで。
                      死無は、最初から決まってました。伝法な女スリで、っていうのは私が決めたことです。
                      『TOMCAT』ちょっと戻して、冷羽ってものが、自分で書かないと冷羽にならない?
                      『早見』言い回しってモノが……そうだったんですね。今度ラジオドラマ今やってて、ボク、とりあえず逃げたんですけど、冷羽の復活やるらしいんで、それは、おまえ書きたいだろうと監督が言ったんですけど、私は別に書きたくないけど(笑)、(他人に)書けないコトは確かなんです。冷羽と松風は、あれはもう、監督も力入れてるし、私も書いてて気持ち好いし、ナニより緒方(恵美)さんが……あの、緒方さん、ボク、厳密にチェックしたワケじゃないんですけど、台詞現場で変えてるコトあるみたいです。
                      『TOMCAT』なるほどね、じゃあとにかく、緒方さんは冷羽を掴んでいたと。
                      『早見』掴みきってますね。
                      『TOMCAT』冷羽松風ってのは役者のものである、と。
                      『早見』そうですね、ボクはそう思います。
                      というか、緒方さんは、自分の中で咀嚼しきらないとダメみたいですね、ダメっていうのは、貪欲なんですね、だから、一番最初に緒方さんにお会いしたのは、『美夕』が記者会見した時ですけど、とりあえず監督とっつかまえて冷羽と松風ってのはどういうモノなのか、聞いてましたね。
                      『TOMCAT』で、最終的にはですね、松風が消えちゃったコトによって、緒方さんが考えた冷羽でしょうあれは、あの松風が融合した冷羽っていうのは、で、あれは早見さんは与り知らない冷羽なワケですね?
                      『早見』そうでしょうね、緒方さんが考えられたんだと思います。
                      『TOMCAT』で、松風が消えて松風であった冷羽の一部が冷羽に戻って、冷羽は今までの冷羽じゃなくなりますよね、そうなった冷羽は、早見さんの中ではそんなに具体的ではなかったろうと思うんですよ、で、緒方さんの芝居から出てきたキャラですよね。だからあの後で、復活というものを書かれる場合は、今度は緒方さんが生きてらしたあの冷羽ってモノをどう捉えるかと言う問題が出て来るワケですよね。
                      どう生きてくの、今まで松風と二人三脚で生きて来た冷羽は多分早見さんはご存じだろうけど、あの松風を喪った、ということは、多分あのくらいで思い付かれたワケですよね、監督からそう言う指示が出たのは、松風消そうよって話は、だとすれば、松風消えたってコトまでは最初の冷羽の中にはないわけだから、あの後冷羽は描けるでしょうかって問題は確かに……
                      『早見』いや、監督に考えて下さいと言ってます、で、実は監督は或る程度は考えてます。松風二号が出るらしいんです(笑)。いやあの、やっぱり、やっていきながら、あの時点になると、私が考えたのか監督が考えたのかハッキリしないところがあるんですけど、「うつぼ舟」のところで冷羽が、その、父親への……。
                      『TOMCAT』あれが、唐突に出て来ますよね、何の前フリもなく
                      『早見』あれはだって、その時思い付いたんですもん(木亥火暴!!)

                      吸血姫美夕 | permalink | comments(0) | -