うらそえ日記

奇談小説家・早見慎司(早見裕司)の公式ブログです。
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TV「吸血姫美夕」大昔語り・5

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    『TOMCAT』そうですね、だから、かえって、(神魔が)人間といると、なにかマズいコトが起こってしまうから封印するというと、人間との関係の上で成り立つ存在っていう風に逆になっちゃうでしょう。だからその辺がね、しかもその、OVAの場合だと、西洋神魔くらいしか出てこないじゃないですか、西洋と東洋の対比みたいなところは割と文化的な枠だから、文化的な意匠じゃないですか、だから、文化的な意匠のホラーじゃないですか、あのOVAの美夕ってのは。
    だからわかるんですよ、西洋神魔だって言われて、ラヴァは西洋神魔なんだよ、で、西洋神魔の仲間が、ちょっとモーホー入ってるヒトが取り返しに来るんだよ、って話も、まあ意匠なんだろうなってコトでわかるんですが。今回なんかあの、第三世界に行ったら、第三世界でお面みたいな奴が出て来ると、っつーコトになるってーと、第三世界神魔ってのもあんのかよ、とかね、インド神魔もあるんだろう、とか。
    『早見』それはあります。だって香港神魔出てますから。
    『TOMCAT』そうなんですよね。だから、「国って関係ないじゃん、神魔とはよぉ」って思ったんですよ。だから、国、或いは漠然と文化圏、そういうモノってあるの?西洋神魔ってからには、人間の世界の西洋という文化的概念が神魔界にも反映してるってコトでしょう、で、第三世界行ってジャングルの奥地行くと、オンゴロのお面みたいのがブワーッと出て来るっていうと、やはりそれは人間の文明の、要するに西洋と東洋以外の第三世界ってコトじゃありませんか。で、今度は中華神魔……えっ、『中華』まで特定しちゃうの?っていう話になってですね、だからやっぱり、人間との関わり合いの中で出て来るのが神魔なのかなっていう風に思ったんですよ。
    『早見』あのですね、まず一つには、私は、書く上で必要のないコトは監督にはまったくきかないんですよ。なので、かなりブラックボックスになってるところはあります。これは既に公表されてるからアレなんですけど、ビデオの時から監督は『河童の三平・妖怪洋魔』がやりたかったんです。そうすると河童の国があるじゃないですか、だからそういう考え方が基本にあるんだと思います。
    『TOMCAT』監督のアタマの中では、神魔は邪神のようなモノであるといっても、全く人間とは関係ないワケではなくて、一種の観念と言うものがあって、人間の観念の中にはある種の小世界というモノがある、たとえば地中海世界なりとか、西洋世界ってありますよね、それと二重写しに、神魔の世界があるっていう発想なんでしょうか?
    『早見』そうらしいですね。平野監督は、少しづつしか話を出して来ないんですよ。その時に必要なコトしか言わないんですね、ボクも必要なコトしか聞かないんです。「これは何なんですか?」って、ずーっと問い詰めないんで、明らかにはなってないんですけど、とにかく『河童の三平』観てくれと。じゃあ、こういうコトなんだなというのは、これは言葉では説明しづらいです、感覚的にわかってるコトなんで。
    『TOMCAT』
    大体これでわかりました、やはり意匠の問題ではあったワケですね。意匠の問題といっても観念の、とか、そこのレベルの話だったんですけど、後半になって来ると、或る物語があって、物語を語る装置なんだと、美夕も神魔もっていう風なトコにシフトして来ると思うんですけど。たとえば「神魔の旗」ってよく言いますけれども、あれはホントにあの幻三兄弟ってのは、神魔である必要すらない、なんかあの、山怪ですよね、要するに、山怪が里に降りて来て、異類婚の話ですよね。だからその山怪ってモノに対して、物語の構造上、それは、神魔ってモノを当てはめたってだけの話であって……。
    『早見』これは、どうも……TOMCATさんの話は難しい(笑)。いや、これはですね、『河童の三平』にそういう回があるんですって。えーっと、ボク、前半しか借りられなくて、後半観られなかったんですけど、これ、監督が非常にやりたがった回なんですよ、だからこれは、そういうアレがあったんだそうです。
    『TOMCAT』単にああいう話がやりたかったんですね(笑)、監督の要望として……。
    『早見』ええ、そうです。ボクは絶対出来ないと思ったんで、ヒトに振ろうとしたんですが、流れの関係で、守護神魔について出さなきゃいけなかった。
    『TOMCAT』守護神魔について……いいところに話が及びましたね。

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    TV「吸血姫美夕大昔語り」・4

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      『早見』残虐については、ホラーとも称さないでくれ、と。だから私が、『ダークファンタジー』って、一応つけたんですよ。しょうがないですからね。ただまあ、こっちもなし崩し的に、中学生にしちゃいましたけどね、後で。
      『TOMCAT』中学生に拘ったのは早見さん?
      『早見』いや、監督もそうです。
      『TOMCAT』14歳であると言うコトに拘ったのは、最初の美夕から……?
      『早見』そうとも言えないんですが、やっぱりねぇ、女子高生の話じゃないだろう、ってコトだと思います、それは。
      『TOMCAT』女子高生だと、もう大人って感じですね。中学生くらいが過渡的でしょう。14歳くらいだと、子供みたいな14歳もいれば、大人みたいな14歳もいる、その辺過渡的なところがあるんで、14歳という……
      『早見』……そうですね。14歳って観念的な少女の典型だろう、みたいな。
      『TOMCAT』美夕って現代の話ですよね、TV版美夕が現代の話であるとすれば、高校生にすれば風俗って搦んで来ますよね、そういうのがいやだったのかしら?
      『早見』それもあると思います。風俗的なモノは出さないっていうコトで。1話でポケベル出すのに、かなり勇気がいりましたけど、案の定、見事に時代から外れましたね。
      ただ垣之内さんがラフデザインを出されて来た時には、ルーズソックス履いてたんで、それはもうデザインの問題なんで、私は何も言う筋合いはなかったんですけども。ルーズソックスは流行り物だから如何なモノか、みたいなのも、上から来ましたけどね。千里とゆかりが履いてて美夕と久恵は履いてないっていう、ちゃんとだから、分けてあるんですよ、デザイン上。
      『TOMCAT』あとは、世界観の構築ってコトで、具体的なコトを細かく聞いて行きますんでまあ、ちょっと考えつつみたいな観じで、まず最初に神魔とはなんでしょうという非常にオーソドックスなところから。まず、はぐれ神魔ってなんなんでしょう?
      『早見』なんなのかよくわかんないんですよ。
      『TOMCAT』最初の頃って結構、カッチリした早見さんなりの神魔観ってありましたよねぇ。具体的な言葉としてというか、たとえば早見さんが描いた話における神魔って、割と定型があったと思うんですよ。たとえば、非常に観念的な遊戯者であったりとかいうような、そういう定型があった筈なんですよね。それが後半になってくると全然違って来るというのが……。
      『早見』それはまあ、何も考えてないからですけども(笑)。ビデオで、神とも魔物とも呼んだというコトが、ややこしいんですよね。OVAだといいけど、TVで流れるから分かり易くというコトで、とにかく人間とは異なる種族があるというのが監督の考え方なんです。監督は「全部、オバケ」って言ってましたけど。
      『TOMCAT』たとえば、初期の頃の神魔観では、やっぱり人間より前に住んでいたってコトにはならないですよね、あの神魔では。人間というモノがいて、人間の観念が育って来て、そのシンボリックな存在として神魔があるって形になってますよね、デザインなり、たとえば名前でもそうですよね、一種の概念ですからね。名詮自性というんですか、やっぱり、名前即神魔の属性ってコトになってるじゃありませんか、最初の頃って。
      『早見』えーと、それはですね、各話の担当脚本家の仕事なんですよ。
      『TOMCAT』この中でなんかちょっとそぐわないってのは、斑輝(第9話の神魔)さんですか?
      『早見』これはなんでだろうな?猫の目だからでしょうね、多分。えーっとね、『虎よ!虎よ!(アルフレッド・ベスターのSF)小説』かな?。あれ、チェシャ猫なんですよ、それでニヤニヤ笑いながら消えてくコトになったんですけど、それでその時丁度『虎よ!虎よ!』読んでたんで。
      『TOMCAT』あの、ガリー・フォイル、あの顔の痍のイメージですか。ブチで光ってるってなんだろう?って最初思ったんですよ。黒猫だし。
      『早見』これはブチじゃなくて、タイガロイドってのがあった筈なんですけど……。(「虎よ!虎よ!」に出てくる物質)
      『TOMCAT』蛇華ってのは華陀(注:古代中国の名医)ですかね?
      『早見』それは山田さんに聞かないとわかんないですね。これは、みんなねぇ、神魔の名前は苦労するんですよ、響きを重んじると、カ行の名前がエライ増えるんですよね、それで、後の方で変えてくれって言われて。そういうのも、小中(千昭)さん、うまいですね。難しくて読めなかった。
      『TOMCAT』これ(蠱奸)、なんて読むんだっけ?
      『shof』まじかん。
      『早見』最初ねぇ、蠱惑がわかんなかったですよ(笑)。
      『TOMCAT』早見さん、作家として問題じゃないですか?(笑)でも、『鱗翅の蠱惑』って(鱗翅も蠱惑も)両方難しいもんね。
      『早見』まあ、いいんですけど、神魔と言うのは、妖怪というより邪神に近いモノであるというコトでした。
      『TOMCAT』邪神というのは、クトゥルー邪神というふうに解釈して宜しいワケですね……。
      『早見』いや、クトゥルーとは限定しないですけども。クトゥルーはクトゥルーで「イクサー」シリーズがありますから。まあ、あのようなモノと。
      最初は、そんなに土着的なモンではないと。まあ、後半で段々崩していきますけど。だからあの、神魔っていうのは、或る程度OVAで考えてたところがあるんで、そうすると、事件起きない場合もあるだろうと、それで、困って、宿命的に人間を滅ぼしてしまうと。
      要するにCDの新吸血姫美夕で、神魔界というモノが設定されましたけど、それの話をまたやると、26話それで終わっちゃうんですね。なんで封印しなきゃいけないかという話も、やり始めると、入りきらないんですわ。なんで、そこんところはもう、デフォルトにしちゃえ、というコトだったんですね。最初の時点でも、人間の弱さにつけこみ、或いは人間を愛する餘り、怪奇な事件を引き起こしてしまう、というコトで、どうやっても人間世界になじめないから、封印されるんだということにしちゃったんですね。
      『TOMCAT』そうですか、そこら辺で判らなくなるのが、なんか、邪神かなんかだとですね、人間とは無関係じゃないですか。
      『早見』いや、あの、人間に興味はあるんだと思います。

      吸血姫美夕 | permalink | comments(0) | -

      TV「吸血姫美夕」大昔語り・3

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        『TOMCAT』(OVAでは)かなり計画的に全4巻が出たワケですよね。素人目で考えて、一巻当たったから二巻も出しましょうと言う作り方ではなかったですね。4巻であの通りの世界観で完結するんだと言う作り方で、非常に恵まれていた作品であった、と。そういう意味でTVアニメで深夜枠でってコトで考えて、それで26回でってコトを考えると、クォリティー面で比較したって意味はないですよね。
        『早見』そうですねぇ……あと、深夜枠で、ビデオ売る事込みでっていうコトでお金が出るって状態でもなかったんです。まあ、勿論ビデオ化する予定ではあったんですけども、予算はそんなになかったです。ただまったくなんにもしないワケにいかないんで、声優さんは非常に豪華ですよね、あれはあの、音響監督の本田(保則)さんの力もあるみたいですけど、平野監督の人徳だと思いますよ。監督、嘘つかない人ですし。CDドラマで西洋神魔編ってのを6巻やりましたけども、その時に関わった方がかなり出てらっしゃいますしね。
        美夕は声優さんには非常に評判良かったです。(アフレコに)絵が入らないんで苦労されたんですけど、かなり面白がって下さって、で、この前、幻の二話のアフレコがあって、行って来たんですけども、長沢美樹さんとか、かないみかさんとかが、続きつくりましょうよって監督に言ってたんですね。あんまり偉そうなコトは言えないですけど、ああいうドラマってのは、今あんまりないですよね。
        『TOMCAT』確かにないですね、アニメにはアニメの作り方があって、って形ですね。
        『早見』……なので、かなり難しい処もあるけれどもそれだけに面白がってやって下さってたんで。声優さんの話すると長くなってしまうんですけど。
        『TOMCAT』では、平野監督の印象を。
        『早見』平野監督は、物凄く真面目なヒトです!冗談を言ったコトが、一年半で一回しかないです。美夕をゲーム化すると言う話がちょっと出た時に「美少女ゲーにしよう、美夕と付き合って、最後血ぃ吸われて終わる」と。冗談、それだけでした。
        だから『冷羽が来た』の回で、あそこに、山の中の女がいて、巡礼の父親とちょっとアレな感じになりますよね。最初私『倒れ込む』ってのを書いたんですよ。そしたらあの、クレームが来て。今非常に厳しいんですよね。「その程度のモン、なんで出来ないんだ」とか監督が言ってるんで、僕が、「じゃあここで、波がザパーンって碎けるってやりましょうか?」と、場を和ませようと思って言ったら、監督が「おまえ、山の中でどうやって波が出るんだ」と、真面目にリアクションされて困ったんですけども。
        (往年のハリウッド映画では、ラブシーンをそのまま描けないので、海で波しぶきが打ち寄せる、などの暗喩が用いられた。)
        『TOMCAT』残酷の描写についても?
        『早見』ガーっと申し送りのFAXが来るんですよ。「美夕が中学生と言う設定になっているが、昨今の事情等もあり……」丁度神戸(酒鬼薔薇事件)の事件の時ですね。「高校生にして欲しい」。じゃ、高校生ならいいのかっていう……。
        『TOMCAT』「血糊、血飛沫の表現については、他の色で代用するのではなく、透過光表現にして欲しい」
        『早見』それで透過光にして、やったら、そこへポケモンが来て(TVの「ポケモン」で画面の点滅が激しくて、発作を起こす子どもがいたため、それ以降、「テレビは部屋を明るくして離れて見て下さい」と注意が出るようになった)、透過光も、TVのOAでは納品前にビデオ編集で、かなり透過光を切ったり輝度を落としたりしてます。
        だから、美夕の場合は深夜でもあるので、生々しい感じを出そうと思ったんです。ただ、それの縛りがもう、きつくてですね、ちょっと上品(に)なっちゃいましたね。あれ、おかしいと思う人は絶対おかしいと思うでしょうけど、胴体絞められて苦しんでるでしょ?首絞めちゃダメだっていうんですよ。菜っ切り包丁で人、刺したり。やりたくてやるわけないですよ。
        放映当時、事故で(早見曰く、秘密という約束を製作サイドとしたので具体的には言えないとのこと)画質が荒れて、某掲示板で「ビデオにして売る気でやってるのか。消費者をなめるな!」みたいなことが書いてあって、僕はキレる寸前で、かろうじて踏みとどまりましたが、いまなら反論しに行きますね。TVをやってるスタッフは、TVが全てなんですよ。「誰も本放送で、不細工な絵が見せたいわけがない! TVで作るものは、本放映が最上にしたいと決まってる」、って、顔合わせると言ってました。僕は自分を「消費者」と呼ぶ人の心根に、よりキレそうになりましたね。今は平気で言うけど、視聴者の誇りも捨てるのかと。
        あと首を連想させるモノは一切ダメ。あの当時は、サスペンスモノでも、それでかなり中止になった奴があって、甚くは、美容院のセットでよくかつら載せとく台あるでしょう、あれが首に見えるからダメってのあったんです。それくらい過敏な反応があったんですね。
        『TOMCAT』……これ、(事情を公開する上で)使えないワケですね?
        『早見』いや、これはいいでしょう。多分監督だったら、それは、言うべきコトは言った方がいいって言うと思います、これに関しては。
        本当にまずいかも知れない話で、もう時効かな、と思うのは、音響の話とかね。あれ(名前を秘する「美夕」以外の作品)とかねぇ、音響監督の頭越しで監督が指示出してるみたいですね。平野監督は、絶対それはやりません。いちいち音響監督を通すと。そうでないと、みんなが勝手に意見言っちゃうと、ごちゃごちゃ。
        私もアフレコ行って、「おまえ何も言うなよ」と言われてたんですけども、それは判ります。二時間とか三時間とかで上げなきゃいけない時に、解釈がどうかって話になると、音響監督一系統でやってないと、大変なんですよ。で、ちょっとまぁどうしようかって時に、監督は或る程度のコトは言いますけど。またそういうので混乱してる時に限ってですね、(スタッフの一員が)自分の解釈を述べ始めたりすると混乱がすごいんで。そういう回もあったんですよ。「〜じゃないかなあ」とか、ミキサールームの後ろの方で、とぼけたことを言ってしたり顔しててね。

         

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