うらそえ日記

奇談小説家・早見慎司(早見裕司)の公式ブログです。
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「異形コレクション」の頃

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    待ちに待った「ガイバー」第一巻の二稿ができて、ほっとした直後に、一本の電話が入りました。事情で、第一巻の発売が延期になる、という担当・Pさんからの知らせでした。
     結果的に「ガイバー」二度目のノヴェライズは、二巻で打ち切りになります。Pさんは私に同情して下さって、文庫書き下ろしのプロットを取り上げて下さったのですが、形にはなりませんでした。この辺の事情は、あえて書きません。
     話を前に戻して、95年頃、「ガイバー」第一巻が遅れる、ということは、印税も遅れる、ということですので、私はたいへんだ収入なくなった、と騒いでいたところ、運命的な救いの手が差し伸べられました。短篇の仕事でした。

     今は昔の話ですが、当時はまだ、短篇の仕事があったのです(今はどこにもありませんが)。太田忠司さんの監修で『悪夢が嗤う瞬間』(ケイブンシャ文庫)というのがあって、井上雅彦さん、斎藤肇さん、奥田哲也さん、矢崎存美さん、津原泰水さん、小中千昭さん、もちろん太田さん、という顔ぶれに私も入れてもらえました。このアンソロジーは、当時NIFTY-SERVEにあった、非公開掲示板(と言えば通じるかしら)で各人が作品を出し合い、出来を高めあって作られたものです。「星新一先生へ」、と巻頭にあるように、ショートショートのホラーアンソロジーでした。
     これで、手ごたえを感じた……のかは知りませんが、井上雅彦さんが、ホラー史上に残るアンソロジー「異形コレクション」を立ち上げます。その頃には、私は「吸血姫美夕」の仕事をしていた、と記憶しますが、短篇付いていたのと、ジュニア作家には一般文芸での仕事はなかったので(当時は)、たいへんうれしいものでした。
     結果的に『異形コレクション』は、私にとってリハビリにもなりました。「美夕」の脚本を書きすぎて、小説が書けなくなっていたのを、小説の世界へ引き戻してくれたものですから。また、井上さんの厳しい直しで、スキルアップにもつながりました。
     その他にも、二、三、短篇の仕事をいただいて、また、「美夕」以降は、その脚本料が入って、なんとか食いつないでいけました。今の私から見ると、うらやましい限りです(笑)。ちなみに「美夕」は、脚本が買いきりなので、印税はもらっていません。

     
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    徳間AM文庫版「ガイバー」

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      二度目の『強殖装甲ガイバー』は、なかなか大変なものでした。
       私も高屋良樹さんも、出ない、ということはなぜかあり得ない、と思っていたので、担当者込みで高屋プロへ赴き、構想を練っていきました。今回の「ガイバー」は、数年を経て、原作がかなり前へ進んだのと、どなたが言ったのか忘れましたが(二、三人、担当者が変わったのです)、「売れれば何冊でも出す」、というのと、あと、「とにかく二冊までXX月に上げて欲しい」、というので、今回は原作に沿った上で、原作で書けなかったところを細かく拾って行こう、という話になり、その第二巻の〆切がシビアだったので、私はついに専門学校を辞めました。
       「ガイバー」の話ですが、第一巻で、どうしても新しい獸化兵が必要になりました。私は、ガイバーは構造的に戦闘シーンが横構図になりますので、縦の動きをするシーンを提案し、シネバイトという新しい獸化兵を、高屋さんがデザインされました。シネバイトというのは私が考えた名前で、「不思議の国のアリス」に出てくる「おりしも ぶり肉 しねばい トーヴが」(柳瀬尚紀訳、かな?)の、しなやかでねばっこいもの、というのを考え、「タコみたいな……」「それだと『クレクレタコラ』だねえ(笑)」「ええ(笑)」というやりとりがあって、高屋さんが、かっこいいクレクレタコラをデザインされました。また、第一巻を書き上げて高屋さんに渡したところ、「最近、何か変なもの、読んでない?」と言われてどきっとしました。折しも、ジュニア小説のリスト作りのために、少女小説をまとめて読んでいたので。それでも簡単に見捨てなかった高屋さんには、心から感謝しています。
       他にも、そうですね……切羽詰まっていたので、高屋プロに泊まり込んで、二巻までのプロットを立てたのかな? 泊まり込んだことだけは覚えています。
       それと、話を進める上で、書いておきますと、この頃、私はNIFTY-SERVEに入会しています。フォーラムはFSUIRI(ミステリ、推理小説フォーラム)で、そこで、太田忠司さんや鈴木輝一郎さん、津原泰水さん、デビュー直前の柴田よしきさん、図子慧さん、鐸木能光さんなど、たくさんの作家と知り合いになり、作家を始めて八年目で、初めて同業者との絆ができました。逆に言えば、それまでひとりとして知り合いのない中でやってきたわけで、よく続いたものです。
       閑話休題。こうして、高いモチベーションで臨んだ「強殖装甲ガイバー 1 リスカーの挑戦」は、担当・Pさんの粘り強い直しもあって、無事完成に近づいている頃、いきなり爆弾が炸裂します。その話は、次回に書いたほうがいいですね。

       
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      「戦−少女イクセリオン」

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        モルダイバー」の次に来た仕事が、「戦―少女イクセリオン」(スニーカー文庫)です。
         これはもう……苦労しました。構成に、中村学さんが入り、いろいろと説明して下さったり、「戦え!イクサー1」を見せてもらったりしたのですが、平野俊弘(当時。現:俊貴)監督の世界と、あと格闘技の趣味についてがまったく分からず、時間がかかりました。
         それだけではなく、進行のスケジュールの都合もあって、下巻が出るまでに8ヶ月かかりましたので、かなりきつい仕事でもありました。実力不足と言われればそれまでですし、いまなら、誰か得意そうな人に振るかもしれませんが、当時は、そんな余裕はとてもなく、平野監督にはご迷惑をおかけしたと思います。そのとき、「いつか借りを返そう」と思ったのが、TV「吸血姫美夕」を引き受けた理由です。
         ただ、確か「美夕」についてのエントリーにも書きましたが、この「イクセリオン」、垣之内さんや女性スタッフには評判がよかったらしいんですね。それで監督は、こいつに今度の「美夕」をやらせてみよう、と思われたらしいので、何が幸いするか分かりません。

         話を戻して、ノヴェライズとはいえ、小説を書くことのできた喜びは、何ごとにも替えられないものがありました。
         そんなところへ、またニュースです。徳間で新レーベルを立ち上げるので、そこで『強殖装甲ガイバー』を書かないか、というお話でした。
         この「ガイバー」については、記事を改めたい、と思います。
         
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