うらそえ日記

奇談小説家・早見慎司(早見裕司)の公式ブログです。
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TV「吸血姫美夕」大昔語り・1

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                       序

     今を去る1987〜1988年、東京では深夜枠に、『吸血姫美夕』は放映され、かなりの視聴率を稼いだ。
     当時、インターネットが黎明期の時代、NIFTY―SERVE(巨大掲示板のようなもの)のFHORROR(ホラーフォーラム)は、この『美夕』を正確に把握した上、で応援して下さったのだが、そのフォーラムのインターネット向けコンテンツとして、TV『美夕』のシリーズ構成・メインライターの早見裕司に、インタビューを頂いた。
     最近は、動画配信などでもTV『美夕』が見られるようなので、その参考に、当時の証言を発掘してみた。
     これから掲載するのは、そのインタビュアーのTOMCAT(現・黒猫亭)氏がベタ起こしした原稿をいただき、書評家・嶋崎とんかち氏の協力の下、まとめ直したものである。
     なお、インタビューはshof氏もFHORRORの一員として参加されたが、連絡が取れなかったため、ご発言は削除してある。
     昔の話はしてもきりがないが、当時の熱気を感じていただければ幸いである。特に、TOMCAT氏の深い斬り込みには、早見もたじたじであった。(早見)

    「早見裕司インタビュー」
    1998/6/6 早見裕司邸
    インタビュー・ベタ起こし:TOMCAT
    協力:shof・ 嶋崎とんかち(注担当)

    『早見』あの一応、大人しいキャラクターと言うコトで……やっぱりねぇ、なんかシリーズ構成ってえと偉そうじゃないですか。
    『TOMCAT』確かになんか「オレが切り回してるぜぇ!」みたいな感じ……。
    『早見』んなコトないんですよね。少なくともこの作品では。
    『TOMCAT』そういう、各話(脚本の)担当者さんとはどういう風な折衝を?
    『早見』基本的には、(平野俊貴)監督と各話の脚本家さんのお話し合いになりますね。私は最初に簡単なプロットをつくるだけっちゃだけなんです。主に監督がお考えになったワン・アイディア、「地下鉄の駅に神魔が棲んでいる」、みたいなのがあって、私がそれを4行くらいにして、ポイントを押さえる(注・いわゆるプロット・ポイントに近いもの)、それに従って、各話の方が、細かいプロットをつくるんですよ。それで監督のGOが出ると、脚本家の方が書いて、あと直しがあって、という形です。特に後半の方になると私は各話の方には殆ど介入してないです。他の方とは顔合わせ程度で、お任せ……みたいな。監督が原作者だから、そこで意見が合っていればいいなだし、ラストの6話で大変だったので。

     脚本家としても、小中(千昭)さん、村井(さん)はそれまでの全話のシナリオを読んで入っていらっしゃったし、その他の方々も、殆どは熱心でしたからね。そうでなくても、「美夕というのはこういうもので」みたいな介入は、まあまあ必要なかったんですよ。
    『TOMCAT』ほぉ、なるほど、もうとりあえずゲストはゲストって形で、自分で、こういう番組のラインがあるからこの世界内で書いてくれって形で……?
    『早見』「美夕」のコトは監督が一番好く判ってますからね、原作者ですし。山田やすのりさん、あの、靖智と書いて『やすのり』さんなんだけども、あの方は最初ちょっとほかの仕事とごっちゃになってて、つかみにくいご様子だったんですけど、最後の方、『人形師の恋』くらいになると完全に掴んでましたね。あの辺も全然私はかまってなくて。あの、『人形師の恋』なんかは、まあざっと、人形に恋をする人形師で……ぐらいのことは言ったと思いますが、最初にFAXでプロットをいただいたら、私が「ひえー」平野監督が「ひええ」。そういう発想はなかったな、って。
     林民夫さん、『白ゆき姫殺人事件』も書いた方、あの人もTV『エコエコアザラク』を書かれましたが、『柔らかい顔』で、当時『不夜城』(馳星周作のノワール小説。金城武主演で映画化された)が流行っていたんで、ああいうのを、と言ったら、本当にハードな暗黒街もののプロットが来て、うれしかったんですが、どう見ても上が通さないんで、和らげていただいたり、そういうことはしましたが、ほぼ全部、監督の指示をお伝えしただけですね。ほぼ皆さん、書ける方ばっかりだったんで。
    『TOMCAT』それじゃ、後半なると早見さんは、最終回のプロットがあって、それに向かって話纏めてくれみたいな形だったんでしょうか?
    『早見』まあそうですね、『美夕昔語り』の回が時間がかかったんで。
    『TOMCAT』ああ、そうでしょうね……寺山(修司。世界的な劇作家)だし。

    『早見』話あっちこっち行きますけど『美夕昔語り』、あれは割と最初の方からきっちりイメージが決まってたんです、『田園に死す』(寺山修司の映画での代表作)と『陽炎座』(鈴木清順の映画。『ツィゴイネルワイゼン』『夢二』と並ぶ三部作)でやると。
    『TOMCAT』なるほど、子供芝居とかそういう(のが出てくる)……
    『早見』で、ビデオ(ソフト)買って観て、困ったなぁと思って……
    『TOMCAT』『田園に死す』も『陽炎座』も、『田園に死す』だし『陽炎座』だもんね。
    『早見』寺山修司や鈴木清順が何年に一本やるモノをですね、週刊ペースで書けってのが大体無茶ですよ。まあ、昨日ちょっと(『美夕昔語り』を)見直してみたら、案外面白かったですけど、コンテあってスタッフあってのことですしね。……下敷きになってる『田園に死す』は、作られた頃には、ATG(低予算の代わりに監督の好きなように撮る映画を売りにした映画会社)というコトで、そういう陰は避けて通ってたんです。特に私、出身青森なんで、あの、「津軽!」ってのがイヤでしょうがないんですよ。やっぱ山ん中から出て、東京行って洗練されようという……
    『TOMCAT』そうですか、一応『早見ストーリー』としては、ちょっとあの、青森、オレぁこんなところはイヤだから、東京行ってシティボーイさなるべい、という80年代ボーイとしての、一通りのアレはあったワケですね?
    『早見』まあ、そうです。ただ、今んなって見てみると、ああ、面白いやと。もう今だと、ああいうモノって文化背負ってないでしょう。で、ちょうど、美夕の半ばくらいで、暫く、網野善彦(の本。中世民俗学者)とか読んでたんで、異人とか芸人というのが分かって、それでまあ、『田園に死す』を見ると、ああ、「芸術」じゃなくて芸だな、と。
     それで納得したんで、最終話やる時に、それまで監督と毎週会ってるんですけど、初めてスタンスから打ち合わせして。
     話してなかったんですよ、する必要がなかったんですね、「今回石井輝男でやりたい」って監督がいうと「はい、やります」って言って、ウチ帰って「石井、石井、どうだっけ?」っていうんで付け焼き刃だったんですけど、最終話の時はちょっと、キチンとやんなきゃいけないんで、一から話して、「これは芸術じゃなくて芸ですよね」「そらぁそうだよ」という話になったんで、だからアレを芸術ととられちゃうと非常にまずいなと思いました。やってることは、こっちは面白がってやってるだけなんで。
    『TOMCAT』ただ、世界観はあるにはありますね。
    『早見』ええ、世界卵をやろうと。押井(守)監督の『天使のたまご』は、幸か不幸か見てないんです。だからあれは、中野美代子(古代中国の研究家)が言ってる、壺中天とかと同じ世界卵の発想なんですね。『天使のたまご』見てたら、書けなかったかも知れない。
     監督の言うには。美夕とXX(最後の敵)とは戦わないであろうと。戦わないで30分どうすりゃいいんだっていうんで、こっちも困ってですね、とにかくなんか埋めなきゃいけないやっていうんで、とりあえず、卵出しとけって。なんでとりあえず卵だかわかんないですけども、発想が世界卵寄りになってたんでしょうね。
     延々と対話してるのが続くコトになるので、なんか絵面で変なコトをしなきゃいけないだろうと。それでずっと話ばらけさせてたのを纏めて行くと、まあ、ああいう会話があるんだろうな、というコトで。その時ラヴァがいると、あっさり倒しちゃいますんで。ラヴァは人情ないですから。それで隔離するわけです。
     その内監督が「『東邪西毒(香港映画)』をやりたい」と。『楽園の瑕』(邦題)ですね、ウォン・カーウェイ監督の。最終話はそれで行くと言うんでそれも観たんですけども、観たら、わかんない。あれ、金庸(香港の武侠作家)の原作読んでてもわかんないし。ただ、あの、平野監督はアクションのヒトですよね、あの、イクサー1にしても、要するにパーッとやると岩山がドーンというのやりたいんだろうな、と、それは思ったんで、それをやりつつ……。
     あとなんか、監督は「散文詩的にならざるを得ないだろう」と、これがまた意味がわかんなくて、散文詩的ってなんだろうと思ったんだけど、まあ、『疵』を観たら大体は分かったと思うんですが、『楽園の疵』で、戦闘の前に岩山んとこに待ってると、そこに骨組みだけの小屋が建ってて、なんか知らんけど女の子がいるんですね。で、その骨組みだけの小屋ってのは、『田園に死す』にも出てくるんですよ、そこで原田芳雄とお母さんと会ってて、お母さんじゃないかな? 鳥居恵子……じゃあ、それ持ってきて「小屋建てましょう」と言ったら、「ただ建ててもしょうがねえだろ」って言われて、「じゃあ、そこに美夕のウチを建てましょう」って話になって、まあ、そっから先はその延長でやったんでなんとか保ちましたけど、まあ、みんな訪ねてくる、と。

     

    つづく

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