うらそえ日記

奇談小説家・早見慎司(早見裕司)の公式ブログです。
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宣伝(水路の夢)

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     Kindle本と、マンガ図書館Zとのために、現在、電子書籍になっている本を宣伝しています。

     90年の「水路の夢」は、私の水準(実力?)からすると、かなり書けた本なのですが、ヒットとは行きませんでした。なにしろ、ジャンルがなんだか分かりませんし。幻水省を名乗る、謎の集団と、季里たちが闘う――というのは、そうですね、「テラ戦士Ψ BOY」ということになるでしょうか。

     この小説は、前作「夏街道」にも増して、季節感や風土感(ってことばはないんですが、まあそんなもの)を細かく描写する、と同時に、私がやってみたかった「マンデルブロー図形」を試してみました。「マンデルブロー図形」については、説明しきる頭がないので、各位調べていただくとして、すなわち、冒頭の季里が眠っている樹とそこに住まいするアリ、平らなプレートの墓碑とその中央に立つメモリアルタワー、逝川高校の図書館塔とその下の建物、西新宿の町並みと三角ビルに代表されるタワー、と、同じ対比構造を、スケールを変えて繰り返す、というものです。

     それがなんだ、と言われると、何を言っても無駄でしょうが、もともとこの物語は、当時、一年に一度、保養に行っていた奥多摩、鳩ノ巣渓谷の国民宿舎で、夜、すぐ裏を流れている多摩川の源流を聴きながら、同時にPSY・Sの「レモンの勇気」を聴きながら不意に思いついたもので、そのつながりがうまくつながるよう、「夏街道」にも、若干、直しを入れています。

     小説には遊びが必要だ、と私は思っていて、それが正しいかどうかは分かりませんが、「水路の夢」は、TOKON10のサイトでも評価していただきました。「東京を舞台にした小説」、という連載に私のほうから持ち込んだ(署名のみお伝えしただけです。文章には一切、関わってはいません)ので、いささか夜郎自大ではありますが、出来レースではありません。TOKON10実行委員会の名誉のために、明記しておきます。

     季里のシリーズは、音楽と深い関係を持っていますが、この辺で、ぎりぎり時代とシンクロしているかな? ぐらいの感じなのですが、3部作の予定が、ここまでの2冊で中断して、タイミングを逸しているのは、売れるとか売れないとかの問題ではなく、当時、ばたばたっと担当者が2人替わり、その3人目の担当者の方に、売り込むのを忘れたからです。バカじゃなかろうか。

     もっとも、企画が通っても、書けたかどうかは分かりません。現在、水淵季里のブログ「水淵季里のつぶやき」で、第3作「神の冬 花の春」を、「本来こうであるはずだった物語」として、書いてみていますが、難しいものですね……。

     もうひとつ書いておくと、「水路の夢」は、最初は原稿用紙300枚分あったのが、アニメージュ文庫の方針で、50枚、削りました。元のデータが残っていればいいんですが、どこかでなくしてしまいまして。「バックアップ」という観念がなかったんです。当時、私は98ノート(初代)を使っていたので、フロッピー(ということばが常に死語)にでもとっておくべきだったなあ……と思いますが、削って何も支障はなかった(と思う)ので、それでいいのかもしれません。

     とまあ、こういうわけで、季里のシリーズ、第一セクションは終わったのですが、続きを書きたい、という気持ちは、10年間やむことはありませんでした。

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