うらそえ日記

奇談小説家・早見慎司(早見裕司)の公式ブログです。
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吸血姫美夕:第二話「次の駅で」

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    TV「美夕」2話「次の駅で」は、1話の直しと並行して書かれました。
    打ち合わせは、週に一回でしたので、1話と2話がほぼ同時に完成稿になって、その場で、3、4話の発注を受けました。ここでの3話は、テレビでは2話「森が呼ぶ」、4話は3話「セピアの肖像」になります。
    この頃は、まだ多少は余裕があったらしいのですが、日記を読むと、重要なスタッフで決まっていない人がいたりして、なんだか緊張感がありました。
    爆弾が炸裂したのが、どの時点だったか、実は私、覚えていないんです。怒りのメーターが振り切れて、記録するのを拒否したのかどうか。この頃は、けっこうまめに日記をつけていたんですけどね……。
    とにかく、はっきり記憶にあることを書くと、打ち合わせの席で、無記名のFAXを渡されました。いくらぼんやりしている私でも、それが視聴者からのクレームとかではない(そもそもまだ放映されていないし)ことぐらいは分かりました。
    そこで指摘されていたことなんですが、1話については、私の所まで苦情が降りてこなかったようです。理由は聴きませんでしたが、「作画の現場に口は出さないでくれ」、と監督に言われていたし、この段階では1話の絵が上がっていませんでした。ですから、本当のことは知りません。
    問題は2話で、いくら神魔の仕業にしても、猟奇過ぎるのは「いかがなものか」といったクレームでした。つまり、没ということです。
    まあ、昔のことを今さらとやかく言いたくはありませんが、私はそれが無記名であることに、はたから見たら異常なぐらい腹を立てました。文句があるなら名を名乗れ。
    だいたい猟奇的過ぎる、と言われても、神魔ですよ? 人間とはまるでちがうメンタリティを持っている邪悪な存在(例外はいますが)なんですから。
    (監督は、神魔については「お化け」だ、としか言っていません。最後まで、それで通しました)
    そもそもこの話のイメージは、江戸川乱歩の「パノラマ島奇談」「白昼夢」ですので(何十年か読み返していないので、読んでみると違うかもしれませんが)、人間ですらこの程度の犯罪を、フィクションの中では犯すのです。あくまでフィクションの中では、ですね。現実にあったら、たまったもんじゃない。
    でも、現実に起こるあらゆる犯罪を、臭いものには蓋で、ましてそのフィクションのせいにされたら、それはそれでたまったもんじゃありません。
    で。
    この脚本の作業の近辺に、いわゆる「酒鬼薔薇事件」が起きました。規制の過剰は、そのせいもあった、と聴いています。他にも理由があるらしいのですが、とにかくもう、いちいち聴いてられっかよ! ということで、怒りは爆発しました。

    ここまでが、TV本放送での「美夕」ですが、没になった2話は、いわゆる「インテグラル版」のLD、DVDに入っています。TVでは、「森が呼ぶ」のアヴァンタイトルに、本来の2話の重要なシーンを入れ込んで、つじつまだけ逢わせたのを、本来のヴァージョンに戻したものです。
    ただ、この話に限っては、TVシリーズが終わってからけっこう経って、アフレコをし直しているので、DVDで見比べると(TV、インテグラル版、両方入っています)、声優の声が、かなり違っています。
    DVDの解説を読むと、「随所に散りばめられた伏線のアイディアは平野監督によるもので、早見氏の脚本に散りばめられていた何気ないセリフやシチュエーションを(ママ)次々と重要な伏線に変えてしまったという。」とありますが、そんなに「何気なく」書いていたつもりはないんですけどね(笑)。特に、千里が一生子どものままでいたい、と言う科白などは、監督から、最後の神魔の正体を聴いていたので、後で必ず使う、と思って書いたんですが……(私がメインライターである以上、最後も書くことになるので)。この辺は、私の言い分ですから、どうぞ割り引いて考えて下さい。
    最後の神魔の正体は、XXになる、というのは最初から聴いていて、ただ、この段階では、まだ確固たる形は決まっておらず、監督が「何気なく」おっしゃったのでは、背中に神魔が貼り付いている二面女、というのもありました。
    そんなことを言ったら、神魔・コンセプトデザインの寺岡賢司さん(最近のご活躍は、すごいですね……)が地下鉄の廃駅に張り巡らせたリボンは、最終2話にも出てきますので、使い回しというのではなく、そこで寺岡さんが考えたことを、監督が活かしたんだ、と思います。ああ、じゃあ、私の脚本が「何気ないセリフ」と言われるのも、しかたはないか(笑)。
    寺岡さんは、当時はAICにいらっしゃったような気がしますが、「美夕」が美術の面で弱かったので、いろんなデザインをまかされていました(それが「コンセプト・デザイン」ということです)。最初のほうから、XXの家の廊下が鬼門を向いている、という設定をされていて、それは24話で監督から言われて、活かしました。詳しくはそこまで進んでから。
    この第2話は、1話に続いて、フォーマット固めの感が強いのですが、井上和彦さんのご出演を得て、よりスタイリッシュになった。私は、そう思います。ただ。当時の苦労は、忘れません。
    予定では、フォーマットに沿った話を2話やって、そこから崩していこう、ということだったんですが、先に書いたごたごたで、放映できなくなったため、話の流れがガタガタになったり、現場スタッフの志気が下がったり(らしい)、その他のトラブルは、4話になるまで、私の耳には入っておりませんでした。
    その後、3、4話でのごたごたで、御難続きとなりましたが、ここではあまり、関係ありませんね。とにかく私たちは、クールなモダン・ホラーを目指していたわけで、その中には、古代からの首信仰(平将門の首塚なんてのもありますな)や、「首が飛んでも動いてみせるわ」といった言葉が入っていた、ということです。そもそも、戦国武将だって首を取るわけですから――最近の時代劇では、その辺、ぼかしていますね。やれやれ。

     
    吸血姫美夕 | permalink | comments(2) | -

    この記事に対するコメント

    なお、弄奢に生マネキンにされた女性達は、わっしがゼーバー逆転チェストで元に戻り全員無事家に帰したのであるッ。首を刎ねられてしまった美女もゼーバーで蘇生させて無事家に帰したのであるッ。ついでに女性達を帰した後の地下鉄の廃駅は解体されて御祓いもされて跡形も無い。

    漫画・アニメ・特撮で悪の組織や怪人等に襲われる一般女性は全員無事だった或いは怪人等が倒されたら能力・呪いが解けて元に戻って無事だった、これが一番であるッ!女性一人も守れずに町を国をそして世界を守れるかッ!?

    「暗殺教室」の3年E組の女子生徒が(勿論男子生徒も)輝いて見えるッ!
    オネーギン | 2016/05/27 8:42 PM
    前のコメントは、ちょっと気になる点がありましたが、言っていることは、別にまちがってもいないので、公開しました。
    その上で、もちろん私も50年、特撮アニメのお約束はしっているのですが、TV「美夕」は、その約束を壊すことによって味を出しているので、方法論が違いますね。別に私は、町や国や世界を美夕に守らせる気はないので。
    いろんなアニメのパラグラフがあって、だからこそ、この世知辛い憂き世は面白いんです。






    はやみ。 | 2016/05/28 12:02 AM
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