TV「吸血姫美夕」大昔語り・16(完)
(美夕の『人物像』
『早見裕司』
う〜んと、ビデオでは美夕は非常にコケティッシュな....っていうんですか?
『TOMCAT』
そうですね、小悪魔的な感じですね。だからその辺は違うでしょう、寡黙で、っていう....。
『早見裕司』
ええ、それはまあ、つくってる側として、西洋神魔編を経ての含みを持たせたってコトはあるんですけど。ま、もう一つは、私が書くと大体ああなっちゃうっていうのはあるんですが....。
『TOMCAT』
要するにやっぱスケバンラインですよね。
『早見裕司』
ただその時にね、父との対立っていうのは、あんまり思い浮かばないんです。スケバン刑事だってガラスの仮面だって、父親、関係ないでしょう?で、父と子の確執ってのは、ボクあんまり好きじゃないんですよ。
『TOMCAT』
こないだ言ってた父性の問題ですかね?
『早見裕司』
う〜ん、アレですね、『ジェダイの復讐』でね、ルークが「お父さんはそんなヒトじゃない」っつった時に、ああこりゃダメだ〜と(笑)。だから、父と子の相克って言ったら、やっぱボクらの年代だと『巨人の星』みたいな感じになるじゃないですか、それ女の子にした場合にはそういう関係にはならなくなっちゃうんですよね。で、ボクは対立のドラマというのはあまり書かないし、また、対立の観念が多分欠けているんだと思います。だって監督と対立したコトってないですもん。一回だけです。最初に門之園さんがキャラデザイン描かれたのを見て、これロリコン入ってないじゃないですかっつった時だけです。その時監督が、もうロリはいいよって言ったんです。
『TOMCAT』
まあ、平野監督って一般的にはロリで売ってるってイメージありますからね、とにかくコケティッシュでロリータなキャラを可愛く描くって....
『早見裕司』
で、それはいいよって言われた時、あ、そうなんだなと思って....。
『TOMCAT』
まあ、物語を語る際に、愛玩物としての少女では、対象になってしまうってコトですね、主体ではない。
『早見裕司』
それだと、14歳にした意味がない....まあ、最近14歳っつってもなぁ....。
『TOMCAT』
最近エンクミ(遠藤久美子)とかいってるしぃ〜、あ、あんなトコにビデオあるしぃ〜(笑)
『早見裕司』
だから、そもそも対立の概念がなくて、また古い日本というか、アレで行くと、近代的自我の確立と言うドラマではなくなって行くはずなんで....
『TOMCAT』
近代的自我の確立と言うと、夏目漱石とかそういう、あっち系ですか?
『早見裕司』
....まあ、森鴎外とか、なんでしょうけども、だから明治の時にあったコトは確かですが....。
『TOMCAT』
近代的自我は多分確立された物じゃなくて教育された物ですよね、今ある近代的自我っていうのは....。
『早見裕司』
はい、あの、西欧的な物ですね。
『TOMCAT』
そうですね、西欧的な個人主義、近代的自我ってそれですね。だから日本には近代的自我なんてなくてですね、とりあえず、近代になっちゃったんだから近代的自我を持たなきゃなんないんじゃないの、ってトコで知識人が足掻いてる、それが明治の或る種のエートスだってコトになってますよね、ただやっぱり、一般庶民、下凡の衆ってホントにそんなコト考えてたかってぇとそんなコト考えてないですよね。なんとなく、黒船来ちゃったしよぉ、なんか、ちょんまげしちゃいけねえんだってよぉ、ってな感じで、なんとなく来ちゃってる....
(かくて夜は更け、話は留まる処を知らず)
TV『吸血姫美夕大昔語り』一巻の終わり
1998年・早見慎司邸にて
談:早見裕司(当時)
インタビュー・ベタ起こし:TOMCAT
協力:shof・嶋崎とんかち