うらそえ日記

奇談小説家・早見慎司(早見裕司)の公式ブログです。
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「夏と少年の短篇」片岡義男

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    「むうん」

    「きょうは、なんの愚痴ですか。ブースカです」

    「いや、それがね、片岡義男の本が、急に読みたくなったのよ」

    「片岡義男」

    「そう」

    「面白いの?」

    「とても」

    「あなたは、何冊か持っていらっしゃるのでしょう」

    「持っている、と思っていたんだ」

    「ないの?」

    「ほとんど、ないね」

    「だったらあなたは、古本を買わなければならないのね」

    「片岡義男の古本は、コンディションが悪いものが多くてね」

    「でも、あなたは買うわ」

    「どうして」

    「それはね……ええい、なんですか、この会話は」

    「いや失敬。片岡義男を真似てみました」

    「全然、似てませんよ」

    「まあ、たまにはいいじゃないの。そういうわけで、片岡義男の本が10冊ぐらいあったと思うんだけど、いま、2冊しか見つからないんだよ」

    「古本で探したらいかがですか」

    「あるにはあるんだけど、コンディションが悪……これは、いま言ったね」

    「言いましたね」

    「保存状態が悪いのには理由があってさ。この人も筆が速いので、町場の古本屋で、「西村京太郎、山村美紗、赤川次郎、片岡義男の本は買取致しません」、と注意書きが張り出されていたんだよ。だから、古本屋にはなかなかない。特にエッセイが面白いんだけど、それもない」

    「残念ですね」

    「残念というか、軽い憤りを感じています」

    「どうにかならないんですか」

    「Kindle版での復刻が進んでいるらしいんだけど、高いんだよねえ……今月は、ブルーレイレコーダーが壊れて、買い直したから、当分はお金が使えないんだよ」

    「それは、言いわけです」

    「また厳しいことを」

    「ほんとうに欲しかったら、買うでしょ」

    「いや、ほんっっっとうに、お金がないんだってば」

    「だったら父ちゃんは、記憶で再現するしかありませんね」

    「やっぱり」

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

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    訃報:笹井一個さん

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       最近、Twitterをあまり見ていないのですが、ちょっと覗いてみたところ、「満ち潮の夜、彼女は」のイラストを描いて下さった、笹井一個さん死去のニュースが飛び込んできて、心から驚きました。その場で、弔電をお送りしました。

       「満ち潮の夜、彼女は」は、ミステリのシリーズにホラーを書いてしまったせいもあって(それだけではないでしょうが)、大変不評を買った作品ですが、吸血鬼テーマの作品としては、本人は気に入っている作品です。笹井さんの繊細なイラストと、ブックデザイナーの守崎正さんの端正なデザインで、幻惑されるような美しい本です。

       それにしても、笹井さん、早すぎますよ……。

       ご本人には、一度、お逢いしたのですが、落ちついた、物静かな方でした。あちらの世界でも、自分の世界を追求していらっしゃるのでしょうか。

       合掌。

       

       

       

       

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      落語

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         アクセス解析をかけてみたのですが、「猫の皿」がどんどん検索されていて、あらまあ、と思いました。

         「猫の皿」は粋な噺だ、と、私は思うのですが、この粋という感覚が、今の芸人にはあまり共有されている感覚ではないのかな、と思います。

         ただ、古典落語の衰退とともに、時代は新しい笑いの形を欲していて、そこに萩本欽一の入る余地があった……って何十年前の話だよ。とにかく、落語はいったんは衰退した、と思います。そして、理由はものすごく長くなるので割愛させていただきたいのですが、古典落語にも、「俺の噺を聴かないのは莫迦だ」という流れがあったことも、私は知っています。

         古典の古典たる品格と、現代でも笑ってもらえる笑いの要素の(いや、圓朝の怪談とかは別ですけどね)両輪が回っていないと、うまいこと進んでいかないんじゃないかと思います。

         私が子供の頃には、TVで毎日のように落語をやっていて、これが大笑いしたんですよね。その頃といまと、どこが違うのか私にもわからないんですが、そうですね……古典落語って、存外面白いものですよ。まだ、伝統芸能に入れるのは惜しいです。

         

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        結城恭介さん

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           そういえば、久しく見ていないな……と思って、結城恭介さんについて調べたら、ご本人のサイトにたどり着きました。Wikiに載っているので、調べてみて下さい。

           結城さんと言えば、若き天才として(実際、私より年下です。キャリアは向こうが長いはずですが)小説新潮新人賞で井上ひさし、筒井康隆の二大作家に認められ、アニメージュ文庫で「理姫−YURIHIME−」という、青春SFの傑作を書かれた方ですが(一般的には、「ガンダム0080」のノヴェライズのほうが有名?)、その後、「ジャンスカ同盟」シリーズを書いたぐらいで、意外に活躍していない、という印象があります。大きなお世話ですね、ごめんなさい。

           新しいサイトでは、新しい試みを始めていらっしゃるようですし、これからも見守っていきたい、と思いますが、結城さんや岩本隆雄さんのような、リリカルな作品の書ける方が、必ずしも成功しないというのは、……あ、フィニイやボーモントもそうか。とにかく、一読者としては、もっとリリカルを、という気持ちがないわけではありません。

           お前はどうなんだ、という話もあるんですが、日々奮闘中、少なくともブログを書く暇がないぐらいには忙しいんですけどね。

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          タイトルも書けやしない

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             こういう仕事をしていると、読書量は、人並みよりはちょっと多いんですが、中には、読んで損をした、という本も、あるにはあります。
             好き嫌いはあまりないのですが、今までで、買って損をした、と思った本は、3冊です。ブログを炎上させる趣味はないので、書名は伏せておきますが、主に、モラルの問題で到底受け入れられない、そういう本です。小説もあります。
             それでも、読まなければならないのが、この稼業ですね。読んだ後の気持ちの悪さを忘れないこと。自ら傷口に塩を塗るような作業ですが、それが仕事です。
             私が20年若かったら、書名を書いているところですが、ブログのためにネタを提供する心境では、なくなりましたので、まあ、そういうこともあるんだろうな、ぐらいで勘弁して下さい。最近、プロットに忙殺されていて、おいしいネタがないんです。
             
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            ぶたぶたシリーズ

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               矢崎存美さんの、ぶたぶたシリーズ最新刊は、「ぶたぶたの甘いもの」です。今月、届きました。
               これぐらい書くと、ネタが尽きるか、と思ったりするのですが、そこは矢崎さん、安定して、どんどん面白くなっているように感じます。
               光文社文庫だけから出ているわけではないのですが、全部で、約20冊近くになりますね。
               どこから読み始めても面白い、読み終わった後、笑顔になれる本です。

               しかし、矢崎存美さんが長篇デビューしたのは、たぶんMOE文庫スイートハートの、「ありのままなら純情ボーイ」だと思うのですが、これがまた、てるてる坊主のゾンビが出てくる、不思議な作品で、そこから読んでいると、矢崎さんの作風は、グライダーのようなものだ、と思うんですが、うまく説明できません。
               知っている人は知っているように、矢崎さんはホラー短篇の名手でもありますが、そこで得た、虚実のちょっとした(実はとても大事な)バランスが絶妙です。
               最近は、「かもめ食堂」シリーズなども始まりましたが、矢崎さんの、地上すれすれの所をふんわりと飛んでくる、安定した腕は、やはり、グライダーだ、と思います。
               
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              現代詩の一例

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                 アクセス解析で、検索キーワードを見ると、あいかわらず、「メイプルシロップ」がトップに立っています。そんなに難しかったでしょうかねえ。
                 だったら、例えばこういう詩はどうでしょう。長いので、一部抜粋にしますが、網谷厚子さんの「小夜子の夜」。

                 白い水の底で 透き通る絹の衣を靡かせている 頭から被り ふわふわと足音もなく 飛ぶように軽やかに 絹を身体から滑らせて 両手をまっすぐ伸ばし 伸ばした先の手のひらを 蓮の花のように丸めて合わせる(以下略)

                 これだけだと、クラゲの話か、と思う方もいらっしゃるでしょうが、これは、山口小夜子さん(どういう人かは、ググって下さい)の、「山口小夜子さんを送る夜」(築地本願寺にて)の経験から来た詩であるらしい旨、注がついています。
                 現代詩というのは、私もよくは分からないのですが、網谷さんや、吉行理恵さんの詩集は、ときどき読み返しております。ことば、というものを練りに練った作品は、詩ならではの美しさを(ときには意味が分からないものもありますが)、感じさせてくれます。
                 ショートショートに似ているかもしれません。井上雅彦さんのショートショートなどには、現代詩に通じるものがあります。
                 私はラノベの作家ですから、わかりやすさを追求するわけですが、だからこそ、読者の美意識に挑戦してくるような現代詩というものは、尊いと思われるのです。
                 
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                太宰治「女生徒」と遠藤久美子

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                   きょうも、ノルマの2倍をこなしました。ふう……。
                   小説を書いているときは、神経がどうしても昂ぶってしまうので、クールダウンして、快眠するには、ちょっと時間がかかります。そういうときに聴くのが、iTunes Store にある、太宰治の「女生徒」のオーディオブック、早い話が朗読です。
                   私が朗読好きだ、というのは、「吸血姫美夕 スペシャル・ドラマII」の「冷羽〜風の中で〜」を聴かれた方にはご存じの通りですが、「女生徒」は、遠藤久美子が朗読していて、太宰治の露悪的なところが、よく出ています。芝居を抑えて、やや投げやりに語っている遠藤久美子の意気やよし、というところでしょうか。
                   問題は、多少高いことなのですが(前後編・各1100円)、遠藤久美子のファンでなくても、一聴の価値は、あるように思われます。
                   ……最近、夜は目がかすむようになりました。おやすみなさい。良い夢を。
                   
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                  老眼用文庫の提唱

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                     最近、近眼が進んで、小さい字が特に夜中にはまるで読めないので、それが私をいらいらに陥れます。
                     夜、読む本は、専門書が多いものですから、自ずから文字が小さくなります。
                     それで、私が提唱したいのは、これから増えていく中高年向けの本です。
                     例えば東洋文庫がありますね。あの大きさで、コストが見合う程度の小説本が作れないでしょうか。
                     すでに、その動きは始まっている……と聴いたことがあるんですが、中高年にでもならないと、本もおちおち読んでいられないような憂き世ですから、小説も、大きい文字で出してくれるといいかもしれない。
                     ついでに言うと、Jコミで出した私の本のように、終わりの「何もない、夏の一日」はおくとして、スキャナーでPDFファイルにしたものですから、いざ画面で見ると、ちょっと文字の薄れているページがあります。これについては、申しわけありません。というしかありません。思いがけない「発見」に、自分自身が、読みやすいんですが。
                     季里のシリーズも、老眼用文庫で出してくれれば……と思いますが、その前に、ブルーベリーのサプリメントか何かを飲んだほうが早いかもしれませんね。
                     
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                    kindle本

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                       私も、本が増えてきて、家族から苦情が出るほどになったので、ついにKindle に手を出しました。ビュワーは何かとめんどくさいので、PC版のビュワーで、机で読んでいます。 
                       とにかく、電子書籍で飼うべき本は、名作の全集、「太宰治大全」「宮沢賢治全集」といった、ときどき引用や参照に使う本です。また、実用書の類などにも食指を動かしています。
                       ライトノベルは、参考になるもので、すぐに読みたい者しか買いません。手取りが低いからです。
                       まあ、例えば太宰治の全集にも、まちがいはどこにでもあるものなので、裏をとる手間があるんですが。あと、PC版のKindleは、検索機能が非常に弱いです。

                       ライトノベルやミステリの気になる新刊は、多少きついときでも、新刊を買っています。これは、電書による収入の問題です。本は、紙の本が出て、売れなければ、アウトであります。
                       
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